JRツアーズMD175系〈スノーダンサー〉

■序
 JRツアーズの非電化区間では振子式のキハ171形式と一般型のキハ173形式が主力となっていますが、2014年現在でキハ76・77形式も東北エリアを中心に相当数が残っていました。
 残存するキハ76・77形式は機関換装こそ受けているものの老朽化は深刻で、早急に新型車両への置き換えが必要でした。そこで2014年から今後の標準車両というコンセプトで企画・製造されたのがMD175系です。
 なお、MD175系と同一のコンポーネントで、交直両用電車として557系も並行して造られており、今後はMD175系・557系をJRツアーズの標準車両として製造することが決まっています。

■車体
 ボディはt1.5のステンレス板をレーザー溶接したもので、キハ171形式よりも機密性を高めています。当然外板は551系1000番台で使われたビードレスとなり外観もスッキリしました。
 正面のみt2.4の鋼板で曲面を構成しています。JRツアーズでは長距離の運用が多いことと踏切事故対策の二点から、運転台は極力高い位置に配置することをデザインの基本としている一方で、増解結を容易にするため(固定運用の555系を除いて)貫通扉が必須なので、正面のスタイルはおのずとこれまでの車両と似通ってしまい新鮮味に欠けるきらいがありますが、電車はスタイルで走るわけではありませんのでそこは割り切っています。
 一方でMD175系は北海道での運用を想定しているため着雪対策として正面は逆スラントノーズとし、ヘッドライトは左右二灯のほか補助灯として運転台上部に三灯を設置しています。先頭部のカラーは雪の中でも視認性を高めるため貫通路を赤、その脇をバイオレットで塗装しています。
 扉は定員確保のため各車1ヵ所としましたが、ドア幅を1,000mmとしてライナーなどに運用する際も乗降時間にダメージが行かないように考慮しています。
 トイレはMD175-100形に車椅子対応形を1基、MD175形に通常の洋式トイレと男子用便器を各1基設置しています。

性能は高いものの必ずしも北海道の気候条件にマッチしたとはいえないキハ171形式(左)に代わり、酷寒地での使用を前提とした構造になったMD175系(右)。振子機能はなくなりましたができる範囲で低重心化ははかられています。

■基本性能

 MD175系はまず、北海道のキハ171形式・キハ76・77形式を置き換えるため、酷寒地仕様として基本番台が作られています。
 そのため機器類は北海道特有の気象条件にマッチするデザインとなっており、JRツアーズでは初のハイブリッド式車両となっています。
 編成はMD175+MD174+MD175-100の3両1ユニット。3両で機器を分散し、車両質量の平均化を行なっているためこの3両ユニットが編成構成での最低単位となります。
 エンジンは6気筒のDMF15HZB(331KW)を2基搭載。ここから発電機で680Vの直流電源をつくり、SiC-VVVFとなったMAP-161-06MRHインバータで交流530Vをに変換し、各車両に2基搭載したPMSMのMB-5580(140kw/530V/246A/1,920rpm)を駆動します。ギアリングは6.53で、トルクは14.5kN(1,478.6kg)となっています。この場合、およそ25km/hまで2.0km/h/sの加速力を確保しています。
 本音としてはもう少しモータを増やして加速力を向上したいところですが、バッテリや搭載機器の質量などから1M1T相当に落ち着いています。最高速度は平坦線で120km/hとしていますが、バッテリ駆動ゆえのトルクの弱さから、3‰での均衡速度が90km/h、25‰では75km/hとかなり厳しい状態です。
 そのため高速性能が欲しい場合はバッテリをバイパスして発電機から直接インバータへ電気を供給することもできます。この場合入力電圧は最大で770Vとなり、勾配均衡速度の向上が期待できます。ただし、発電用エンジンに過負荷をかけるため、目安としては2,200rpm駆動の場合15分程度を上限としています。
 もちろんJRツアーズの車両は各駅に停車するような用途には使われないため、この仕様でも問題はありませんが、キハ171形式が軽量化を極め、俊敏に走っているのを考えるとやるせない気持ちになるのもまた正直なところです。
 車両質量はハイブリッドゆえに重くなり、キハ171形式の39.5tに対してエンジン搭載車のMD175-100が43t、中間車のMD174でも42tとなっています。JRツアーズでは4線級規格の路線への入線が必要なことから軸重12t未満という縛りがあるため、質量のかさむハイブリッド車は性能面での妥協が強いられているというわけです。

北海道では床下の着雪が車両故障の原因となります。そこでMD175系では床下にカバをして機器を覆っています。乗務員扉から客窓の間にエンジンと発電機を搭載することで、エンジンを雪害から守っています。

 こうまでしてハイブリッドにこだわる理由は、北海道の気象条件によります。北海道のアスピリンスノーはたいへん目が細かく、機器の隙間という隙間に侵入して絶縁破壊やサビの原因となります。そのため床下機器はカバで覆い物理的侵入を防ぐのが一番ですが、ディーゼルカーの場合熱源のエンジンをカバで囲むわけに行きません。
 これがハイブリッドならエンジンを運転台直下の床上に配置し、床下は電気機器や燃料タンク・水タンクを配置することで雪の浸入を防ぐことが可能。駅間が長く、運行中のサービスを受けにくい北海道において、故障を軽減することは車両性能よりも大事であるということが、キハ171形式を北海道で運用してわかったことです。まあそのくらい壊れたんですよキハ171形式は。それにドライブシャフトやトルクコンバータといった大きくて重たい可動部品を省略できるのも魅力です。
 また、ハイブリッドではなく電気式ディーゼルカーにすれば、バッテリの分軽量化が図れるのでは? と思う方もいらっしゃるでしょうが、これも北海道での下り勾配を考慮すると、ハイブリッドが望ましいという結論に達しました。
 下り勾配でブレーキを使う際、たとえ鋳鉄制輪子といえども雪を噛んでしまったら本来の制動力は期待できません。しかしハイブリッドであれば回生ブレーキが使えます。安定した電制と個別制御インバータによるトルク管理でアンダーパワーながらも走行特性は決して悪くありません。キハ171形式のような胸のすく吹き上がりは期待されても無駄ですが、キハ76・77形式よりはいい走りをします。
 燃費の改善も重要な課題でした。ハイブリッド化によってエンジンの効率が改善(いちばんおいしい領域で一定回転で回せるため、効率が大幅に上がります)されたため、リッターあたり2.4kmを達成。燃料タンクの容量も1,000リットルと小型化が可能となりました。
 軸重12t未満という縛りはハイブリッド車においてかなり厳しいもので、定員乗車の団体車両なれど、1両当たり60名(=3.9t)のペイロード、850kgの軽油、400kgの水などを積んでいくと、1両あたり42tが限度となります。MD175-100の43tは定員乗車の際は軸重オーバとなりますが、その場合は燃料搭載量で調整しますが、4線級の路線に入線しない場合は燃料も満タンで運行するのは言うまでもありません。
 ブレーキはHRDA-1Aなので、電車との連結も可能。特に557系との連結は557系側に加速特性・ブレーキ特性をMD175系にあわせるスイッチを用意しているので衝動も解消しています。したがってたとえば557系とMD175系の併結で上野を発車し、水戸からいわき方面へは557系、非電化の水郡線方面へはMD175系が向かうといった運用も可能となります。

■車内設備
 MD175系はハイブリッド車ゆえに車両質量がかさんでしまうため、他の部分で軽量化を図る必要があります。
 真っ先に犠牲となったのが座席です。できるだけ軽量で低価格の座席を模索したところ、JR東海で採用している小糸工業のTR64座席が最適ではないかということになりました。TR64座席はN700系に採用されている座席で、新幹線用ゆえに軽量化が考慮されたうえ耐久性も抜群。さらに量産効果で価格もこなれている点がポイントです。
 ただ、TR64そのままだとコンセントがつけられないため、台座部分にコンセントプラグを2基装備しています。本当は肘掛につけたかったのですが、そうなると座席の設計を1からやり直すことになるため、ちょっと不便な位置ですがこれもコストのため泣きました。
 このTR64をシートピッチ1,000mmで並べ、座席数は3両で158席となりました。485系の3両つなぎ198席と比べると40席も減ってしまったあたり、団体旅客の減少を感じずにはいられません。
 もっとも、485系には車椅子対応のトイレはありませんし、シートピッチも910mm。ラウンジのようなコモンスペースもありませんので一概に比較はできませんが。
 2号車のMD174形には小さなラウンジを設けています。これは長時間(と言っても5時間程度ですが)の乗車で気分転換ができるスペースをJRツアーズでは重視しているためです。ただ、キハ76・77形式ではラウンジの座席をソファタイプにしたためラウンジに長時間居座る人が多く苦情の元になったため、MD175ではあえてプライウッドの椅子としてかけごこちを悪くしています。

座席は汎用品のTR64を採用。軽量化が施された質素な座席ですが、かけごこちは決して悪くありません。JRツアーズの想定する4〜5時間程度の運行であれば十分用を成します。


長時間の移動が発生する場合の気分転換施設として簡易ラウンジ〈クラブジャーニー〉を中間車両MD174形の車端部に設置。

■運用

 MD175系は2014年より札幌および五稜郭営業所に順次配置され、3連17本を製造。これによって北海道に配置されたキハ76・77形式を淘汰、キハ171形式を岡山に順次転属しています。
 最終的には北海道エリアはMD175系3連24編成で車種統一を図り、岡山にキハ171形式を集中配置させ、岡山よりあふれたキハ173形式を各エリアのキハ76・77形式置き換え用に転属する予定です。
 この計画により、2017年3月改正でキハ76・77形式はすべて引退となりました。
 北海道向けのMD175系の投入が完了した後は、本州・九州向けMD175系1000・2000番台の投入も予定されており、キハ173形式の置き換えも進むものと思われます。
 それはいいのですが、キハ171形式はどうするんでしょうね……。

557系〈ピオニー〉(左)とMD175系(右)。標準車両として可能な限り同一のコンポーネンツを使用しています。

まあ、ユニットカットした551系よね走りに関しては

ユーはいつもニューカーにケチをつけますね! いけないことですよ!

オーバーロードが効かないバッテリー駆動の限界ですね。585系のような電流がぶ飲みでパワーをひねり出すような走りはそりゃあ期待できません

そして運転台が狭い! 狭すぎるのよ

着雪対策として正面を絞りましたからね。最後部に来たとき雪を巻き上げない形状を考えた結果ですので仕方がないかと

おかげでスタイルはよくなりましたよね

そういうことデース! かっこいい電車は大事なのデーズ! 玩具になって許諾料で濡れ手にバブルデース!

131系が初めて模型化されましたけどそれっきりですね。JRツアーズの車両は人気のなさではぶっちぎりなので

オーマイガッ! ホワイなぜJRツアーズの車両は人気ナッシンですか!

社長が悪いんじゃない?

おそらく経営者の問題かと

そうやってユーたちはすぐにプリンシパルの責任にするのノーグットですよ!

人気のない社長の問題はさておいて、今後はMD175系が標準車両として作られるってのは既定路線なんですか?

北海道が一段落したら老朽車を抱える九州エリアに、MD175系1000番台と557系を投入してキハ173形式と487系を置き換えます

オーマイガッ! キハ173は1993年製造のニューカマー! もうスターにするですか!?

24年選手をニューカマーと言ってしまう社長が、JRツアーズのガンですよね

それよりキハ171形式の後継をはやく造りなさいよ社長。もっとギューンと飛ばしてガツーンと止まるやつ

マイガッ!


MD175系の投入で、キハ76・77形式は2017年3月をもって全車両退役しました。3月にはキハ76・77形式の引退ツアーが催行され、多くの人が別れを惜しみました。


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