どこかのマンガで見たような見なかったような…… 名家の没落がよく見える
麻雀トリプルウオーズ
(日本物産/1989年)  

日本物産と言えば、雀豪ナイトで「脱衣麻雀」を世に示した、脱衣麻雀の元祖とも言えるメーカーだ。ニチブツは多い年には年間10作以上脱衣麻雀を作っており、少々「質より量」という感がなきにしもあらずであった。トリプルウオーズもそんな時代に作られた脱衣麻雀だ。

ニチブツらしい女の子 紫色のおっぱいに注目
 脱衣麻雀のいいところは、安い基板で儲けを得られることだ。麻雀の思考ルーチンなど8ビットで十分可能だし、女の子のグラフィックを表示するといってもせいぜい320×240ドット、大部分の脱衣麻雀は256×192ドットという粗い画面に16〜256色程度しか使用していないので、大した容量は必要ない。
 日本物産は実に安っぽい基板で発売していた。トリプルウオーズもZ−80AとZ−80BのデュアルCPUという点のみ目立つだけで、実に平凡な基板だ。これを15万円くらいで売っていたとすると、日本物産は笑いが止まらなかっただろうな
 まあ、内容さえよければ基板などどうでもいい。で、ゲームなのだが……当時の水準から言っても平均以下という感じは否めない。当時はセミ実写系の「アイドル麻雀」全盛で、アニメ絵の脱衣麻雀が相対的に少なかったゆえにこの程度でもインカムを稼げたのであろう。前後して発売された「お嬢さん」「麻雀Club’90s」(ともにニチブツ)と比べても、出来は今ひとつだ
 16色で描かれた女の子は、元ネタがなんとなく想像できるマンガやアニメのパクリ絵。これは麻雀刺客のヒットで気をよくして以来のニチブツの伝統だ。なんというかその、微妙に似ていないっていうか……外国のアニメオタクが一生懸命模写しましたって感じの絵で、萌える前に「ああ、よく描けましたね」などとほほえましく思えてしまう。また、色数の関係で乳首が紫色だったりするのもご愛敬だ。
 しかし、信じられないかもしれないが、アイドル麻雀が全盛で、アニメ絵のおっぱいがほとんど見られなかった時代ではこの程度でも十分萌えられたのだ。性の開放に関する弊害を思わず考え……ないよな。やっぱおっぱいが自由に見られる今の方がいい。
 おっぱいの形はあまり個性がなく、今見るとつまらないものがあるが、ニチブツの脱衣麻雀は作品ごとにおっぱいの形が似かよるという傾向があり、それはそれで味がある(例えば、麻雀Club’90sなんかだと、ちょっと垂れ下がった大きなおっぱいで統一されている)。実際、9年も前の脱衣麻雀なので、この辺をとやかく言うつもりはない。むしろ麻雀バブル時代の思い出に浸りながら「そうだよなぁ。このころはこんなんでも嬉しかったんだよなぁ」と懐かしみながら遊ぶべきだろう。

ひどすぎる麻雀部分 まあ、女の子は全体的におとなしめなんですけどね。
 しかし麻雀部分は9年前とは言えひどいものがある。トリプルウオーズのタイトルに見られるように、プレイヤーは3人のキャラクタの中から任意のひとりを選び女の子と対局する。キャラクタにはそれぞれ「リーチ後5順目に99%ツモれる」「配牌にドラが含まれる」「相手のリーチ後の当たり牌がわかる」などの特技がある。しかし、「リーチ後5順目に99%ツモれる」以外はまず使えない。使いたくてもゲームの難易度がそれを許さないのだ。
 トリプルウオーズでは難易度調整を配牌で調整しているようで、ランクが上がると敵の配牌にはホンイツ系の役が仕込まれ、5巡くらいで上がってくる。牌を絞っても問答無用でツモるのでドラがあろうと当たり牌がわかろうと死ぬときゃ死ぬ。逆にどんなクソ手でもほぼ確実に上がれるという「保証」がないと、ゲームにすらならないのだ。
 とはいえ、じゃあリーチ後ツモれるから楽かというと、そうは問屋が卸さない。ルールでは3回相手を負かすか相手の持ち点を0にするかで「勝ち」となるのだが、いちばん弱い敵で持ち点13000点。つまりハネ満上がっても1回では倒せないのだ。加えて大物手を上がるととたんにランクが上がる。1回満貫を上がっても、次に確実に上がれる保証はない。むしろ4巡くらいでホンイツを上がられてジ・エンドとなる場合が多いのだ。
 凶悪な難易度に対抗するかのように、リーチ後5巡目に99%の確率で上がれるキャラクタは、経験値をためると99%の確率でリーチ一発ツモを上がれるようになる。しかし敵は、そうなったらなったで3巡くらいで四暗刻を上がったりする。こうなるともう、なんのためのレベルアップなんだかわかりゃしない軍拡競争のむなしさを脱衣麻雀で味あわせてどうするんだニチブツ。
 まあそれもなんとかなったとしよう。もっと困るのはゲーム中4回でてくる村娘。こいつと対戦すると、どんなクズ手でも上がられたら一発で死ぬ。しかもこの村娘に勝たないとアイテムがもらえずゲームが進行しない。
 こんなのクリアできねぇよ。泣いてもいいですか?

さらばニチブツ こんなんで満足できたとは……古き良き時代なのかねぇ……
 ただやみくもに長いだけのゲーム展開、やる気のない女の子の音声、破綻した難易度……。いくらアニメ絵脱衣麻雀が少なかったとはいえ、よくこんなゲームにインカムが入ったものだ。飢えというのは恐ろしい
 しかし、考えてみればニチブツ麻雀はメダルコーナーにおかれることが多かった。メダルゲームはそれこそメダルを湯水のように使って遊ぶため、当然ビデオゲーム麻雀に比べ難易度は高いし、設計思想も全然違う。トリプルウオーズの設計思想は、まさにメダルゲームのそれにだったのではないだろうか。だとすれば、出たこと自体が間違いだったともいえる。
 プレイヤーが楽しめないゲームは、自然にフェードアウトする運命にある。ニチブツが凋落し理由も、トリプルウオーズを遊んでいるとなんとなくわかる気がする。

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