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加賀電車両アウトライン

▲加賀電は限られた電力設備で最大の効率を得るため、低速に性能を全振りしたセッティングを好んで行います。手前から歯数比7.07の800形、6.53の200形、6.06の600形。
 
 
 加賀電の線形は基本的に平坦線です。最急勾配は34パーミルですが全3ヶ所、しかもすべて400メートル以内という条件ですので勾配対応は不要です。また、もっともきついカーブは半径100メートルですが、台車間距離13,600ミリ未満、オーバーハング2,900ミリ未満であれば問題なく曲がれます。
 これらの条件から、加賀電の車両はセッティングにかなりの「見切り」が可能です。まず、連続勾配に対応しなくていいということは、定格出力に余裕を持たせる必要がないということです。たとえばモータ出力は平坦線での性能だけを考えればいい。高速域は一時的なオーバーロードで対応し、モータのトルクがいちばん美味しい領域、加賀電では25キロ〜77キロをその範囲としていますが、その速度域に性能を全振りできるわけです。
 その思想を徹底的に推し進めたのが、特急車である200形と800形です。特急者でありながら200形は6.53、800形に至っては7.07というハイギアードになっています。200形は将来時速121キロ運転を考慮していたため多少「遠慮」していましたが、121キロ運転を事実上あきらめた現在、高速域の余力は不要ということで800形は7.07のギア比を採用しています。
 これによって重量級のダブルデッカーを、少ない電力で引き出すことだできます。逆に最高速度は126キロとなり高速域に余裕がなくなりますが、平坦線であれば一時的に5,800rpmという高回転でモータを回すことで解決できます。
 この、低速に全振りするセッティングの萌芽は、1971年登場の400形に始まります。1M2Tを経済的に成立させるために6.06のギア比を採用したのです。これによって低速を低電流で起動でき、インフラの負荷を最小限にした上で輸送力増強が可能となりました。もっともこの方法では発電ブレーキを有効に活用できないこともあり、500形では5.85にギア比を若干下げ、その分モータの限流値を下げていましたが、1986年の600形で再び6.06に戻しています。
 「JRの電車に比べて加賀電の電車は煩い」というのは沿線住民ならば実感として理解できると思いますが、それは基本的に高速運転に剥いてない車両をオーバーロードでモータを回しているからにほかならないわけです。
 なぜこのようなセッティングになっているのかといえば、変電所の供給能力が限られているため、編成あたりに使える電流が限られているためです。特に重たいダブルデッカー車が高速域にセッティングをあわせると、低速では大電流を使って起動しなくてはなりません。朝のラッシュ時はそうでなくても編成あたりの電流使用量が大きくなる中で、ダブルデッカー車が雁行すると電力がたいへんきつくなります。
 そのため、起動〜25キロの速度域で電流をあまり使わないセッティングが要求されます。モータの力を発揮できないのであればギアで力を増幅するしかありません。それゆえ100形以降の車両はギア比を7.07にそろえています。800形では更なるハイギアードを目指して7.76というギア比も検討されましたが、そうなるとトップスピードが115.6キロとさすがに余力が厳しくなるので7.07としました。
 とはいえ将来、PMSMを本格採用するとなれば7.76や8.4あたりのギア比で6,800rpm回すなどというセッティングもありえるのではないかと考えています。

▲かつての加賀電は非力なモータでできる限りのパフォーマンスを引き出すためのセッティングに苦労していました。車両を小型化してパワーウェイトレシオを上げたり、ギア比を下げる代わりに電動車比率を上げて補ったりなどさまざまな工夫をして、できる限りの高速運転を行った歴史があります。画像は車両を小型化して37.5キロワットモータで軽快な運転を実現した70形。
電力の負担軽減のためにギア比を上げるとか、聞いたことありませんが
加賀電はしがらみがないから、他社ではできないこともできるのよ
しがらみ?
加賀電はどこの路線とも接続していませんし、線形がご覧の通り平坦線なので、いろいろとセッティングが割り切れるのです
はあ
たとえば大規模な路線なら、平坦線と勾配線、両方をそこそここなせる車両が必要になります。そうなると性能の選定も難しくなります
普通電車と特急で同じ車両を使う鉄道も、性能を低速か高速かどっちに振るかで悩むわよね
つまり加賀電は悩む必要がないと。確かにあの社長、悩みとは無縁な感じですね
社長以外の人間は悩まないわけではありませんが、割り切るのは簡単です
4ドア車は平均駅間距離1キロをターゲットにして、20〜77キロをトルクピークにもってくればほかの性能は捨ててもかまわないのよ
特急用は車体が重いので、やはりギア比を大きくとって低速の引き出しを楽にする必要がありました
社長と高速域は捨てていいんですか?
200形は6.53で妥協しましたが、800形は5,800rpm回る高回転モータを採用することで7.07でも106キロ運転を可能にしました。あと、社長は何かあった際に詰め腹を切ればいいので普段はあれでいいのです
社長まで割り切りがいいんですね。それはそれとして、ハイギアードがゆえに高速域のモーター音、ものすごく大きいですよね。あれは問題だと思うんですが
30分定格で195キロワットですから問題はありません
いや、そういう問題じゃなくてですね
7.07といっても14:99、6.53だって15:98だから。大して変わらないわよ
いやどちらも音大きいですから
別に800形の音が大きいからって他社と乗り入れしているわけじゃないしね
孤立路線の特権です
…もういいです

▲100形以降の新造/改造車両は高回転型のMB-5023。ギア比は7.07をスタンダードとしています。インダクションモータで容易に高回転を獲得できるようになったため、低速でのトルクを最優先としています。
 
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