経済車から高性能へ…400形
オイルショックで旅客が急増した加賀電において、必要なのは絶大な輸送力でした。加賀電は信号設備の関係で編成長が60メートルまでしか伸ばせません。つまり、20メートル車3両編成4ドアこそが加賀電の求めるクルマでした。700形に続く20メートル車として、400形が企画されたのはごく自然の成り行きです。製造はアルナ工機。 400形のコンセプトは、経済的に大量輸送を可能とすること。当時700形が800形のTc850型をぶら下げた1M2T編成で活躍していましたが、これをさらに発展させた1M2T3両編成を成立させるためにはどうしたらいいか。加賀電が達したひとつの結論が軽合金ボディの採用でした。軽合金ボディで鋼体重両を抑え、かつ重量物をM車に集中配置することで粘着を稼ぐことにしました。 このコンセプトにふさわしいモータは155キロワットのMB-3110。これをギア比6.06で回すことで低速のトルクを稼ぎ、高速域でのトルク不足はモータの馬力で補うという考え方です。制御器は単位スイッチ型の制御器が製造終了してしまったので、電動カム軸制御のABFM-174-15MHA。直列32段並列12段弱界磁4段という多段制御器です。これは1M2Tというシステム上、低速の引き出しで空転が懸念されるために、低速側を多段制御にする必要があったためです。 MB-3110モータは端子電圧750ボルトで直並列制御を行います。さらに低速ではバーニアを効かせるため、ブレーキはシンプルにHSCとなりました。端子電圧750ボルトでは発電ブレーキを有効に使えないので割り切ったわけですが、それでも制御段数が多いため、M車の床下にはずらっと抵抗器が並んでいます。 見た目ではパンタグラフが2台搭載になっているのが目新しい点です。これは大馬力モータが起動時に電流をバカ食いするため、1パンタあたりの負荷を軽減するためです。また、M車の車輪径は一般的な860ミリですが、T車の車輪は軽量化のため762ミリとなっているのも特徴といえましょう。その車輪を支える台車も、軽量化を指向した一自由度系のもので、枕ばねはコイルばねとして弾性をオイルダンパで押さえ込む構造となっています。 気になる性能ですが、MB-3110は1,300kgmの引張力を持っているので5,200kgm、編成重量が3両で83トンですので2.02キロ/秒。アルミボディの効果がはっきりと現れています。高速性能も弱界磁率を35%まであげたため、許容回転数4,600rpmで最高速度117.2キロ。当時の最高認可速度90キロにおいては十分な性能でした。400形は経済的な大量輸送という目的は達成されましたが、いかんせんアルミカーの価格は高価で、400形は3両1編成で製造終了。1977年からは汎用性を重視した普通鋼の500形の製造に受け継がれました。
▲10月の制御機故障後、中間450型は運転台を取り付け電装解除した上で460型として再起。500形や600形の増結用として活躍しています。460型がほかの400形と異なり非貫通で登場した理由は、冬場に貫通扉から隙間風が入ると寒いこと、100形グループと部品を教養化することでのコストダウンなどがおもな理由です。 シャイニング・スタンダード…500形 400形は性能面での文句は(当時のレベルとしては)ありませんでしたが、アルミボディが価格面で折り合いが付かず、量産には不向きであることがわかりました。一方で70形の老朽化は待ったなしのところまで来ており、早急に代替車両を用意しなければならないところまで加賀電は追い込まれていました。 結果、ボディは普通鋼、機器類は300形で実績のあるMB-3020モータで手堅くまとめる方針としました。ただし、300形の主制御器であるABFM-168-15HAは製造終了していますので、電動カム軸式のABFM-188-15MDHAとなりました。制御器名にはMが入っていることからもわかるように制御器は単位スイッチではなく電動カム軸方式。制御段数も400形のような超多段制御ではなくオーソドックスな直列12段・並列12段・弱界磁4段の制御器ですが、400形にはない発電ブレーキが装備されています。これは、300形・400形とも発電ブレーキを省略していましたが、悪天候時の高速制動に不満があったため、超多段制御をあきらめて発電制動を組み込んだといえます。400形の1C4Mではなく300形の1C8Mを継承したのも、発電制動を有効に活用するためです。 このようにシステム上の矛盾はないのですが、今度は悪天候時の加速に問題がでました。加賀電は最大3両編成までなので、1C8Mだと動力ユニットは1ユニットとなりますが、そうなると1軸空転したときにたいへん不利なことになってしまいます。300形は単位スイッチ式の制御器なのでドラムをすばやくS1まで戻して再粘着をかけることができますが、電動カム軸式ではカムをS1まで戻してさらにそこから所定のつなぎまで戻すというもどかしさが残ってしまいました。結果400形のように制御段が細かくないため、悪天候時の運転にはけっこう気を使わなくてはなりませんでした。
▲2011年から始まったリニューアル工事では、窓の固定化や走行装置のVVVF化が行われました。制御公式は1C8Mから1C3M2群と130型と同等にそろえられています。MB-3020は現代でも通用する優秀なモータですが、部品の払底はいかんともしがたく、500形と600形などABFM車は順次、MAP車に改造される予定です。 |