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加賀電に新造車両800形が登場


▲2012年8月の空港線延長開業に伴い、特急の運用が1運用増加するため、ダブルデッカーの新型車両を投入することになりました。

はじめに
 2012年8月に空港線新小松?小松空港間が開業するに当たり、特急の車両運用が増加するため車両の増備が必要となりました。汎用性を鑑みれば4ドア車を製造するという考え方もありますが、加賀電特急イコールダブルデッカーという旅客の期待を裏切るのもいかがなものかということで、ダブルデッカー2ドアの新造車、新800形を3両1編成製造することとなりました。
 

編成
 車両は武蔵ヶ辻側からMc車811型+T車851型+Mc車821型の2M1T3両編成で、制御機器はすべて851型に集中配置されています。
 車体はアルミボディとなり、1両あたりの重量も、200形の48トンから44トンと軽量化しました。それでも重いことに変わりはありませんが、絶対的な重量はダブルデッカーという特殊事情ゆえ仕方のないところです。先頭部は3次曲面を使った流線型構造となっていますが、万が一の衝突事故に備え連結器部分から窓下までの部分をクラッシャブル構造とし、客室をサバイバルセルの概念で守ります。
 ところで、ダブルデッカーゆえの特徴として、室内空間の狭さはどうしても解消できない問題として残ります。800形もその例には漏れませんが床下機器の小型化や台車構造の見直しで200形と比べて30ミリの低床化を行い、床面高さを1,100ミリとしています。わずか30ミリですが室内高さの見付を改善しています。


▲200形に比べて曲線的なスタイリングとなった800形。車体の製造はスイスのSteadler社で、現地で三菱電機の電装品と合体した日瑞合作車両です。

システム
 主制御器はMAP-354-15V30。すなわち1C4Mで1号車811号車と3号車821号車に185キロワットのMB-5099モータ(440ボルト420アンペア/定格1,890rpm/許容回転数5,800rpm/6,100kgm)4台を装備します。歯数比は7.07と200形より低速に振っています。これはボディを48トンから44トンに軽量化したことと、モータの特性が変わった(200形はMB-5035A/165キロワット)ため、性能を低速に全振りして低速での挙動をシャープにし、高速域は全閉密封モータの特性を生かして高回転で乗り切るセッティングを組んだためです。はっきり言ってめちゃくちゃとしか言いようがありませんが、200形が起動時に全負荷をかけてフリーラン領域まで引張る半ば強引な加速をするのに対し、800形は低速では軽々と動き出し、78キロまでまったくダレることなく速度が伸びていきます。
 MB-5099はおよそ6,100キログラムの引張力を出せるので、54キロまでの加速力は3.0キロ/秒、7.07の歯数比ゆえに最高速度は126.7キロ。もっとも営業最高速度は106キロなので、オーバーロードで乗り切ってしまえばどうってことありません。
 ブレーキは電気指令式MBSA-1でゼロ速度付近の逆相ブレーキ付です。200形では回生失効対策に発電抵抗を搭載していましたが、800形ではこれがEDLCとなっています。回生ブレーキが失効した際は、回生電流をコンバータ経由でEDLCに蓄電し、次回加速時のアシスト用に使用します。リチウムイオン二次電池やフライホイールなども蓄電装置として有力でしたが、充電深度と重量、充電回数の兼ね合いなどを検討した結果、EDLCを採用したものです。
 このように走行システムの複雑化により、衝動など乗務員の運転技術だけでは手に負えない部分が出てきているため、800形は車両全体のシステムを監視する車両マネジメントシステム「CATS(Control Assist Total System)」を搭載。動力、トルク配分、空転制御、ブレーキ制御など乗務員の負荷となる部分を補助するシステムです(語源は「猫の手も借りたい」)。基本的に加賀電の乗務員はHLやABFM単位スイッチ方式をこよなく愛するいわゆる「ドライバー」タイプが多く、昨今のMAP車(※1)で必要とされる「マネージャー」タイプの人間が少ないのが悩みです。技術の進化は究極的にはドライバレス・コンダクタレスとなることは間違いありませんが、そのつなぎとしてCATSは「ドライバーにいかにマネジメントを意識させず、さりげなくアシストできるか」を念頭にソフトウェアが構築されているのが、加賀電ならではの事情といえましょう。
 閑話休題。台車は100形のものを基準に、ダブルデッカー由来の重心や重量バランスを見直したボルスタレス台車を採用。これにより200形と比較して鋼体で3トン、台車で1トンの軽量化を果たしています。加賀電は標準軌でありなおかつ線路状態が良好で、急カーブも寺井駅構内の1ヶ所だけ。加えて最高速度時速106キロ程度ではヨーダンパの必要性は認められませんが、将来のスピードアップに備えて準備工事だけはしてあります。

※1:加賀電では車両の区分を制御装置の製品名で呼び分けます。制御方式が自動加速・抵抗制御方式であればABFM車、VVVFであればMAP車などとなります。

▲851型階下席にはEDLCと補助電源装置などが詰まっています。それでも200形に比べてずいぶんと軽量化されました。機器室の左には「この車両は日本とスイスの見識を持って鉄道車両のあるべき形のひとつとして具現化した」と、製造元のスイスSteadler社からのメッセージが書き込まれています。

室内
 座席は200形同様集団見合い型の固定クロスシートでシートピッチは870ミリ。転換座席にすると重量増になるばかりでなくシートピッチをある程度広げる必要もあり、座席定員の減少が懸念されます。また、ダブルデッカーという構造上、座席下を荷物スペースとしたいため床下に転換・回転機構を組み込めなかったというのも理由のひとつです。
 扉の鴨居にはLED方式の情報装置を、両サイドからはエアカーテンを装備し、防寒対策としています。

▲2012年8月までは200形と共通で2ドア3連運用を中心に運用の予定です。
 

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