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JRとの競合

 
■高額運賃がネック
 仙台青葉通〜高城町間で宮電はJR東北本線と競合している。松島付近ではお互いが見えるまでに線路が接近するほか、JR塩釜駅と宮電西塩釜駅の間は1kmも離れていないし、JRの国府多賀城駅と宮電多賀城駅も直線距離で1kmと、かなり接近している。
 こうなると宮電としてもJRを意識した営業政策を組まざるを得ない。特に大きな駅勢圏を持つ高城町・本塩釜・多賀城の各駅から仙台都心部への利便性を最大限に確保するの必要に迫られる。

 JR東北本線は仙台から小牛田までの間はおおむね毎時2本の普通電車が運行されている。普通電車とはいえJRは平均駅間距離が3.9kmもあるため速度は速く、所要時間は23分となっている。
 対する宮電は特急が同等の所要時間23分で走破するほか、多賀城準急が32分、普通が43分かけて高城町駅まで合計毎時6本を確保している。ただし普通は途中駅で特急に追い越されるため、仙台都心アクセスに使える列車は実質毎時4本となる。所要時間で勝てないのであればせめて運転頻度で……とも思うのだが、上の画像でもわかるとおり東塩釜〜高城町間が単線なので、増発もままならない。
 そんな中で特急の表定速度66km/hは地方民鉄としてはがんばっているが、仙台青葉通〜仙台原町間の最高速度は地下線なので90km/h、仙台原町〜本塩釜間は線形も悪く、最高速度も100km/hに抑えられているうえに平均駅間距離は1.2km。これでは普通電車に前を阻まれ、思うようには走れない。多賀城準急にいたっては多賀城まで各駅に停まるため所要時間は32分。JRの9分落ちまで持ってきているがなかなか苦しいところだ。
 運賃はJR410円に対し宮電は620円と、絶望的な差が生じている。仙台市内地下線建設の際に設定された加算運賃50円がなければと思うがそれでも570円。利便性がほぼ互角なだけにこの差はどうにもならない。
 この運賃差は交通費が自腹の学生には特に敏感のようで、たとえば東北学院大の学生は、宮電多賀城駅よりもJR国府多賀城駅を利用する学生が多い。JRの仙台〜国府多賀城間が240円なのに対し、宮電の仙台青葉通〜多賀城間は390円もするのだ。往復で300円の差はさすがに大きい。
 特急が地下鉄南北線に直通しているのは、運賃の差を仙台市中心部へのダイレクトアクセスでカバーするための戦略といえるかもしれない。もっとも、JRはJRで長町・富沢方面へのアクセスに有利なのであまり決定打になっていないようだが。
 このように定期旅客を中心に、JRへの逸走は目に見える形で起こっているのだが、宮電としてはあまり大きなアクションを起こしてはいない。これは宮電が設備の都合で4両つなぎまで、加えてターミナルの仙台花京院駅・北仙台駅は1面2線でラッシュの輸送力に限界があるため、定期旅客の大幅流入を避けたいという意図が見える。
 つまり、儲けの薄い定期旅客、特に通学定期の割引率を低くして競合区間はJRを利用してもらい、それよりも日中の旅客を積極的に確保しようという営業戦略が現行のダイヤからは見て取れる。
 たとえば宮電百貨店で5,400円以上の買い物をすると駐車場無料か宮電区間内帰りの乗車券が半額になるというサービスはまさにその典型といえる。片道を半額にするだけでも定期券の割引率よりは低く、輸送力増強を伴わない時間帯でなら割引運賃でも十分見合うということらしい。
 なお、仙台〜石巻間でもJRと競合しているが、こちらは運転本数と所要時間で宮電が勝っており、運賃はJR840円に対し宮電1,150円と大差がついているものの、毎時2本の特急が40分で仙台まで直行する利便性でシェアをとっている。

仙台青葉通〜石巻を40分で結ぶ仙石特急。毎時2本の頻度と速達性で、310円の運賃格差を埋めている。
サマンサ 2017
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