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3800形

 
 1980年に登場した地下鉄直通用車両、2800形の置き換え用として2008年から製造を開始。途中震災で製造ペースに遅れがでたが、2015年までに11編成を揃え、2800形を置き換えた。
 仙台市営地下鉄は4両すべての車両の定員をそろえるため、先頭車両が22mとなっているが、宮電の福住以遠では22m級の車両が入線できない。そのため3800形も2800形同様、全長20mのまま運転台を二階に上げて定員を確保し、乗り入れの条件を満たしている。
 3800形は地下鉄線内での高加速性能と宮電区間では特急としての高速性能が必要となる。2800形ではAVFチョッパ制御を用いて低速トルクを確保し た上でギアリングを4.82と深くとって力任せにTDK-8510モータを回していたが、基本セッティングは3800形も変わらない。ただし現在はより高回転で回せるインダクションモータ(IM)が使えるため、ギアリングは6.53と2800形よりもかなり浅くとっている。とはいえ、他のIM車は7.07なので、それよりは深いギアリングを選んではいる。
 コントローラはATR-H4170-RG638A。型番が示すとおり4C1M制御×2コントとなっている。170kwのTDK-6147A(1,100V/114A/1,960rpm)は、250%乗車時245A条件で28KNを出力できるので、44km/hまでの加速力は3.2km/h/sを確保。地下鉄線内での所要加速力3.0km/h/sを満たしている。一方高速性能もギアリングを深めに取っているので100km/hでも9.5Nを確保。すなわち加速力1.km/h/sとなり、最高速度110km/hの宮電としては十分なトルクを持っている。
 この性能は特に、60〜75km/hの速度制限が多い宮城野原〜高城町間での再加速に絶大な力を発揮する。75km/hからの再加速であれば1.8km/h/s程度の加速力が残っており、速度制限から再加速までの時間がギアリング7.07組に比べて速く、まさに特急のために造られた車両と言っても過言ではない。ハイシーズンに運行される9000形の松島特急と比べるとその特性の違いははっきりとわかる。
 もっともその高速性能の高さと加速性能は、低速での大電流によってまかなわれていることを忘れてはならない。ギアリング7.07組が175Aで所定の加速力3.2km/h/sを出すのに対し、3800形は245Aも使うのだ。これは起動回数の少ない特急と定員未満の乗車となる日中の普通電車に使うと割り切ったセッティングで、ラッシュ時は普通運用から退いて特急と塩釜急行の運用に入るのはひとえに仙台口での電流対策による。

両端が展望席なので、車掌室は中間車のモハ3800・モハ3900の車端部に設置されている。

 なお、仙台市営地下鉄内では最大電流で各駅停車の運行となるが、市営地下鉄は宮電の管轄ではないので気にする必要はない。せいぜいき電強化につとめていただきたいとのこと。
 ボディはアルミ合金製。運転台を二階に上げた関係で車体質量の増加が懸念されたため、車体を軽合金で仕上げて質量増加を抑える必要があったためだ。もちろん車両の軽量化は大事なことだが、それ以上に仙台市営地下鉄との間に『車体質量37t未満』という取り決めがある以上、なんとしても4両で148tに押さえ込まなくてはならなかったのが真相だ。
 結果としてクハが31t、モハが35tで編成質量1136tとギリギリに抑えこんでいる。
 ブレーキはHRDA-1A。T車遅れ込め式の電気指令式だが、最近のトレンドでT車のブレーキはほとんど使わず、M車の回生ブレーキだけで停まるようにセッティングされている。列車密度が比較的つまってる仙台〜本塩釜あたりまでならほとんどM車の回生ブレーキだけで停まれるが、単線区間はそういうわけにも行かないので、高城町と矢本に回生電力吸収装置を設置してる。
 車内は展望席のみ固定クロスシートで、そのほかはロングシートとなっている。2800形にしても仙台市1000系にしても、将来はクロスシート化も考慮した窓割となっていたのだがそれはかなわず、3800形ではついに窓割りもロングシート車と同じになってしまった。
 日本三景の松島を抱えながら観光用車両がないというのも悲しい話だが、最大編成が4両つなぎまで、加えて東塩釜以遠が単線で列車密度が詰められないとなれば仕方のないところか。
 3800形は直通運用に必要な9編成が揃い、現在は北仙台〜石巻間の仙石特急を中心に、多賀城回転普通電車と朝夕の塩釜急行が主な役目となっている。
 なお、3800形のうち3802編成・3804編成は東日本大震災で被災し、2015年に3811編成・3812編成として代替新造を行なっている。そのためラストナンバーは3812編成だが、編成数は全部で9本となる。

乗務員交代は外の梯子を使って行なわれる。雨や雪の日はたいへんだ。


矢本付近を快走する3800形仙石特急。高城町〜石巻間は最高速度が110km/hとなる。
サマンサ 2017
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