index.html
 

3600形
 
 2011年の東日本大震災では22両の車輌が被災する大きなダメージを受けた。そこで急遽新造されたのが9000形だったが、とにかく納期優先で造ったためパノラミックウィンドがオミットされてしまった。
 2016年になると新車の投入ペースも通常に戻ってきたので、パノラミックウィンドの新型車両を望む声が乗務員から高まってきた。そこで企画されたのが3600形だ。3200形の次なら3400形になるのでは? と思うかもしれないが、宮電としては(それがいつになるかはわからないが)4両つなぎの新型用に3400形をあけているとのこと。
 一般用の車両では、震災前の2006年より製造されている3200形があり、この車両は乗務員の評判もよいので再び3200形の製造をしたいところだが、3200形はアルミボディで高価。まだ震災復興で十分な予算を捻出できない宮電としては「贅沢な新車8両よりもそこそこの新車10両」を選ばざるを得ない。もっとも、新車を投入できるだけ恵まれているともいえるのだが。
 3600形は9000形のステンレスボディをベースに、3000形と同様のパノラミックウィンドの正面をくっつけている。静粛性はアルミダブルスキンの3200形に及ばないものの、その分価格は安い。車体質量もシングルスキンならともかく重量のかさむダブルスキンとであればそれほど変わらず、モハ3601型で質量35tに収まっている。
 せっかく3200形でモデルチェンジしたのに3600形では新しい顔を起こさなかった理由としては、運転台の機能的には3000形で問題はなく、へたに顔のバリエーションを増やして余計なASSYを増やすよりも、可能な限り統合してASSYの圧縮を図りたいという考えがあったためだ。将来的に余裕があれば、9000形の正面も3000形と同じにしたいというのは塩釜工場の弁。

3200形(左)との併結は日常的に行なわれている。アルミボディの3200形に対し3600形(右)はステンレスボディでの製造となった。

 編成はモハ3601+クハ3651の2両つなぎ。4両つなぎは今のところ必要数に達しており、3600形として4両つなぎを造る予定はない。
 走行装置は9000形同様(つまり、3200形同様)のATR-H4195-RG638-F。サフィックスが変わっているが気にしなくていい。4M1Cで195kw(1,100V/115A/1,960rpm)のTDK-6380Aを駆動する。ギアリングは宮電標準の7.07で、最高速度は120km/hとしている。ただし最高認可速度は3800形をのぞいて100km/hとなっている。
 TDK-6380Aは3800形のTDK-6147Aよりも、ピーク回転数を6,600rpmと大きくとっているのが特徴(逆にTDK-6147Aは低回転でのトルクを重視している)。起動時はギアリング7.07のおかげで、定員250%条件でも175Aで27kNを出力。すなわち34km/hまでの加速力3.2km/h/sを確保している。ギアリング7.07の場合ここから急速にトルクが落ちてしまうのだが、電流増による高回転でこれを確保し、85km/hの段階で13.5kNを確保し、加速力は1.6km/h/sを確保。最高速度100km/hに対応している。
 3600形の想定される運用は普通電車がメインなので、仙台花京院〜本塩釜間の平均駅間距離1.2kmをターゲットにしたセッティングとなっている。
 ギアリング7.07はMT比1:1で手軽に高加速を得たい場合には有用な手段ではあるが、起動時に大きな力が路面にかかるため、2両つなぎで1コントの場合は並列接続とはいえ空転の危険がある。
 そこで3600形では電流制限スイッチを用意し、湿潤状態では電流を111Aに制限し(当然加速力は落ちる)、空転を防ぎながらの運転が可能となっている。4両つなぎで2コントになれば、後ろのM車に強引に押してもらううちにトルクが回復するので、175Aフルで加速することは(あまりやってほしくはないが)可能だ。また、混雑時であれば旅客の質量がそのまま粘着力に加算されるのでそう心配する必要はない。電流制限スイッチは主にワンマン運転区間での使用を想定している。
 ブレーキはHRDA-1A電気指令式。3200形まではHSC車との連結が考えられたのでブレーキ読み替え装置を取り付けていたが、3600形は2620型・3200形以外との連結は想定していないので読み替え装置はオミットしている。

石巻からやってきた2両の普通電車。本塩釜からは4両つなぎとなって仙台に向かう。

 車内はロングシート。運転台後部にはワンマン運転時に使う料金箱が設置されている以外、他車と変わるところはない。
 3600形は2両つなぎ6本を製造。2620型・3200形2両つなぎと共通の運用に組み込まれ、仙台花京院〜石巻間を通して走る大運転の普通電車や矢本〜石巻間の小運転、仙台港線などに使われている。
 計画ではあと1編成を製造し、2400形を置き換える予定だ。

仙台花京院駅に到着する3600形普通。石巻から特急の倍以上の時間をかけてすべての駅に停車するロングラン列車だ。

サマンサ 2017
dan564@gmail.com /サマンサのTumblr
inserted by FC2 system