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仙台港線のふしぎ

仙台臨海鉄道の仙台港駅の片隅にある仙台新港駅。朝夕のラッシュ以外は60分ごとに普通電車がやってくるだけののどかな路線。通常は2400形が2両つなぎで使われる。

■不思議な運賃
 宮城電鉄の運賃は、初乗りが160円でそこからにょきにょきとたけのこのように伸びていくことで定評がある。それはそれとして宮電の運賃には他の鉄道にはない特徴が、『たけのこ運賃』のほかにもあることはご存知だろうか。
 左の表が宮城電鉄の運賃表だが、いちばん上の距離欄に注目してほしい。0〜3kmとある。通常は小数点以下は切りあげるので、運賃表は1kmからの記載になるが、宮電は0kmから。宮電の駅間距離はたしかに短いし、1km未満の区間もたくさんあるが、いくらなんでも駅間ゼロ距離というのはありえない。
 しかし、0km表示は意味があるのだ。

宮城電鉄2017年現在の運賃表。初乗り運賃が1〜3kmではなく0〜3kmになっている。

仙台港線内で購入するきっぷでは、乗車駅が仙台新港と明月で並列表記されている。これは運賃計算において両駅は同一駅としてみなしているためだ。きっぷの発行が多賀城駅になっている点も注目。

■同じ駅として処理
 仙台港線は多賀城駅から分岐する2.2kmの支線で、途中に明月駅がある。駅間距離は多賀城〜明月が1.0km、明月〜仙台新港間が1.2kmだ。しかし運賃計算上では多賀城〜明月間は2.2km、明月〜仙台新港間が0.0km(ゼロ距離に単位をつけるのはなにかおかしい気もするが)となっている。
 これについては、「明月駅と仙台新港駅は同一駅とみなしている」というのが宮電の公式見解だが、なぜこのような措置をとっているのか。それは仙台港線がワンマン運行を行なっているためだ。
 仙台港線の電車は、多賀城駅の5番乗り場に発着する。5番乗り場と他のホームは改札で区切られており、仙台港線の利用者はホームでラッチを通過することになる。このラッチを通過した時点で改札は終了し、乗車券は回収され、ICカードは出場処理が記録される。明月・仙台新港の両駅には改札機もカードリーダもなく、降車客は両駅では何もする必要はない。

明月〜仙台新港間の実キロは1.2km。しかし運賃計算上は明月駅と仙台新港駅は同じ距離として処理している。

 逆に明月・仙台新港から乗車する場合は多賀城駅でラッチを通過。この際に仙台新港からの乗車処理が取られる。ICカードがない場合はホームの券売機で切符を購入し、ラッチを通過する。こうすることで仙台港線にかかるコストを圧縮しているというわけだ。
 このとき、明月駅と仙台新港駅で運賃が異なると多賀城駅の改札で対応できない。そのため、明月駅と多仙台新港駅の距離を同一にして、どちらの駅で乗り降りしても同じ運賃にする必要がある。というわけだ。
 ちなみにこの方法だと、明月〜仙台新港間の利用は改札の機会が失われてしまうが、明月駅では運転台直後のドアのみを開閉し、仙台新港行きは乗車時に、多賀城行きは降車時に運賃を現金またはカードで直接運転士が収受する。明月駅の利用客数が少ないがゆえにできる便法といえよう。
 ここで冒頭の運賃表が効いてくる。明月〜仙台新港間の運賃計算距離は0.0km。運賃表もそれゆえに0kmから始まっているので、宮城電鉄はたとえ0kmでも電車に乗れば160円を取られる、というわけなのだ。

多賀城駅の仙台港線乗り場は、切り欠きホームの5番乗り場。看板と改札機が見えるところで切符は回収され、ICカードは出場処理が行なわれる。

サマンサ 2017
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