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2600形
 宮城電鉄は東洋電機と長い付き合いがあるため、電車の制御方式はコンパウンドモータを用いた界磁チョッパ制御を古くから採用していた。3両・4両つなぎは8M1C1コントで運用できるものの、2両つなぎは8M1Cだと出力過剰となり、かといって4M1C永久直列では界磁チョッパの利点のひとつであるである回生ブレーキがナマクラになって使い物にならない。そのため2両つなぎの車両は1600形や1400形という抵抗制御の車輌が長く使われていた。
 そういった問題を解決する最適なコントローラとして東洋電機から提案されたのがVVVFインバータ。宮城電鉄も早速これに飛びつき、2000形でRCTによる4M1Cの試験から始まり、経済性を重視したGTOの8M1C、さらには走行特性を鑑みた1M1Cまでさまざまな試験を実車で行いデータを提供して(ここの紆余曲折にはいろいろあって実に楽しいのだが割愛)、やっとものになったインバータを搭載したのが、1986年に登場した2600形だ。
 2600形は本命の2両つなぎではなく、8M1Cの4両つなぎで登場した。これは残存する1500形や600形など17〜18m級車両の置き換えを優先したためだ。また、4M1Cではなく8M1Cでつくったのは、ちょうど4500V/3000Aの素子が実用化したことと、界磁チョッパ車と車両価格を可能な限り近づけることが必要だったためだ。
 車体はt1.5の軽量ステンレスで登場。これまで宮城電鉄ではパテントの関係でセミステンレス車かアルミカーを投入していたので、初めてのオールステンレスカーとなった。
 また、車体幅も2800形同様の2,950mmで登場。このサイズが宮電の標準となって現在にも続いている。
 オールステンレスボディとなったことで塗装も変化。これまでの下半分赤、上半分クリームから、ドア以外を無塗装とした銀色のボディとしてイメージチェンジをはかっている。

長期の試験を経てようやく営業用に投入できたVVVFインバータ装置、ATR-H8170-RG638。名前のとおり8M1C制御としてコストを抑えている。

 コントローラはATR-H8170−RG638で8M1CのGTO-VVVF。モータはTDK-6380-Aで出力は170kw。これをギアリング7.07で駆動する。TDK-6380Aは注文どおりの高回転モータで、低速域は軽量車体と7.07のギアリングで静々と加速し、40km/h〜80km/hの速度域で十分なトルクを発生(20kN)できるようにセッティングされている。
 とはいえ、軽量車体にギアリング7.07、しかも8M1Cという構成は空転にはめっぽう弱い。2000形の試験では車輪形の微小な差がトルクアンバランスを生んでまともに走らない(車輪径2mmの差でトルクが12%変動するのには手を焼いた)といったこともあって、車輪径の公差をより厳しく管理するとともに、すべりに余裕を持たせて推定式を何度も書き換えて、ベターの数値に持っていくまでに莫大な時間を要している。
 そのおかげで2600形は試運転中もいくらかHB遮断事故ががあった程度(あったんかい!)で、営業後の運行ははきわめて安定しており、メインテナンス性も高く整備人からは好評をもってむかえられた。
 ブレーキは電気指令式のHRDA-1。まだ全電気ブレーキは装備されていないものの、回生ブレーキは5km/hくらいまで使えるため、制輪子の減りが緩和された。補助電源装置も2600形からはSIVとなり軽量化がはかられた。ただし瞬間停電を防止するため、パンタグラフは二個装備としている。
 台車はボルスタレス台車のND-716。軸ばねはゴムブッシュ支持のオーソドックスなもの。最高速度が100km/hで軽量車体なのでヨーダンパは未設置となっている。

デビュー当時、福住車庫で1500形と並ぶ2600形。2600形の投入で中型車両を一気に淘汰し、全車両が20m4ドアに統一された。

 2600形は1986年〜1990年に4両つなぎ6編成が造られ、1500形などの中型車両を淘汰した。その後も鋼鉄製車両の淘汰用として4M1Cのインバータを積んだ2620型とともに製造が続けられ、最終的に4連6本と2連5本が造られ、名実ともに宮電の主力車両となった。
 東日本大震災では2606編成・2673編成が被災して廃車となったが、それ以外の車両はその後も活躍を続けた。しかし、GTO機器の老朽化が進んだため、2両つなぎからインバータの更新をすることとなり、形式も3400形と改められている。2両つなぎの更新が終了したら4両つなぎの更新を行う予定で、現在は4連5本・2連3本が2600形として活躍している。

2両つなぎの2620型は4M1CのATR-H4170-R638-Aを装備。外見からもインバータ形状の違いがわかる。


銀色のボディに赤い扉のカラーリングは、2600形から始まった。
サマンサ 2017
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