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3000形
 2600形のVVVF制御はまずまず好評を持って迎えられたものの、天候の急変によるトルク変動に関しては並列接続ゆえにシリースモータよりは圧倒的に強いとは言え、インバータの推定式に当てはまらなかったり再計算が間に合わなかったりすることもあり、悪天候の際は応答性にすぐれた界磁チョッパ制御(または2800形のAFEチョッパ制御)が乗務員には信頼されていた。
 しかし、1990年代末期からのコンピュータ技術の進歩は著しく、高周波に耐えられるIGBTが実用化されるとコンピュータの演算速度も飛躍的に向上し、推定式の高度化および高速化が図られることでトルク変動にも十分対応できるようになった。
 宮城電鉄でもより高効率のコントローラを導入すべく、2600形をマイナーチェンジして新形式を起こしたのが3000形だ。
 3000形はIGBT-VVVFのATR-H4170-RG638をモハ3000型に2基装備。4M1C×2群制御として荒天時の運用に配慮。推定式の改善により、再粘着性能を向上させている。再粘着のキモは微小空転をいかにすばやく検知してトルク制御を行なうかがかぎになってくるのだが、センサレスベクトル制御の実用化と推定式の高度化でこの問題についてはほぼ決着を見た。
 コントローラも低価格化が進み、4M1C×2群でも従来の8M1C1コントよりも低価格となり、冗長性の向上をコストアップなしで達成できたのも大きい。

3000形のキモは4M1C×2群のIGBT-VVVFを低価格で導入できたことで、それ以外の部分は原則として2600形を踏襲している。

 こういった走行性能の改善が3000形のキモであり、それ以外の部分については2600形は満足のいくものであったため、『問題のないところはいじらない』の原則から2600形をそのまま踏襲しているが、正面形状は2600形から大きく変わった。
 2600形はいわゆるオデコを深くとっており、頭が重苦しく軽快さに欠けるという指摘が宮城電鉄の役員からあがり、より軽快な正面形状を「強く希望」されたというのがもっぱらの噂だ。とはいえ日本車輌としてもアイデンティティであるオデコは譲れないところだったらしく、システム設計そっちのけでスタイリングの会議が長引くという有様だった(そうだ)。結果としてそれなりに軽快、それなりにオデコでまとまったようで、2016年より登場した3600形にもこの正面が採用されている。
 また、乗務員からは幌がむき出しになっているのは冬季の連結作業時に雪が詰まって支障が出ること、走行中に貫通扉から隙間風が入って寒いといったてんからプラグドアの中に幌を格納する方式に変更している。もっとも3000形は4両つなぎのみなので幌は装備されておらず、この機能が活きるのは3600形か らなのだが。


2600形(左)と3000形(右)。公式リリースでは『頭の重さを改善した』とは言うが……。

 このほか2600形から変わった点は、コンプレッサがHB-2000×2基装備からMBUスクロールコンプレッサ1基に変わったこと、モータがTDK-6380-Bとなりサフィックスが変わったくらいだろうか。TDK-6380-Aとの違いは低速時の電流制御の違いくらいで、定格電流175Aもピーク回転数5,890rpmも変わらない。ギアリングもこれまで同様7.07となっている。
 座席はロングシートで変わらないが、宮城電鉄ではじめてバケットタイプの座席を採用している。1人あたりの幅は440mmと相変わらず狭いのであるが。
 3000形は2600形に変わり2002年から4両つなぎ6編成を製造し、最後の18m級車両である1500形を置き換えた。2006年からはアルミボディの3200形に製造が切り替わり、製造は打ち切られた。
 3000形においては震災で被災した車両は皆無で、現在でも6編成すべてが普通から松島特急までの各種別で使われている。

現在も宮電の主力として活躍する3000形。4両つなぎのみなので基本は仙台花京院〜高城町間での運用が多い。
サマンサ 2017
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