2500形〈ドラフター〉 2000形が8編成揃った段階で性能向上から特急の1分程度のスピードアップを企画したものの、ダイヤ上で電鉄有馬まで特急から逃げ切ることになっている準急が、乗降遅延が発生すると遅れを取り返せず特急が追いついてしまうケースがたびたび発生した。これは山岳線で起動するには現行車両では加速力がいまひとつで、六甲山口〜山上の街間では回復が絶望的になるためだった。そこで、性能の余裕を確保するため、1500形の足回りを強化(する一方で界磁チョッパのコントやコンパウンドモータを捻出し、予備部品を確保する)して加速性能を向上する工事をおこなうことになった。このとき改造工事中に不足する車両数を補うために新造車両として2500形〈ドラフター〉が2編成登場した。〈ドラフター〉の意味は特急の先陣を切ってトンネル内の空気を切り裂く「ドラフティング」に由来する。 これは〈スリップストリーム〉でもよかったしそのほうがイメージが伝わりやすいとの意見もあったが、アメリカン・ヒルクライム・インターバンを自称する六甲電車は、表現もアメリカンであるべきとしたようだ。 2500形および改造1500形の肝は、駅発車後すぐに40‰の勾配となる山上の街駅からの加速性能向上だった。具体的に言うと40‰登り勾配を3.3km/h/sで起動する性能だ。 これはギアリングを7.76に高めることでなんとか達成できそうではあったが、ここまでギアリングをピーキーに設定すると、今度は高速域が苦しくなる。準急は加速性能もさることながら平坦線では最高速度110km/hで走らなくてはならない。ギアリング7.76では5,500rpmオーバーでモータを回す必要があり現実的ではないことから、ギアリングは7.07に抑えることとなる。これなら騒音の問題は残れど5,000rpm程度で110キロを達成できる。 2500形で初採用となったSiC-VVVF。軽量化に貢献。〈六甲車庫〉 車体は走行性能を損ねないよう可能な限りの軽量化を進めており、アルミボディのシングルスキン構造。1500形は軽量化のために強制通風機を撤去せざるを得なかったのに対し、2500形はボディの軽量化と固定窓化で強制通風機を存置している。 台車は2000形と同じKD-330Ac湿式シュリーレン台車。ブレーキはMBS-Rで純電気ブレーキつき。ボルスタ付で昨今の電車の中ではかなり重たい部類の台車に入るが、連続勾配区間で台車にかかる強度を考えたとき軽量台車の採用をためらっているのが六甲電車の現状である。安全に対しては臆病であれ、という考え方である。 シンプルにまとめられた車内。強制通風機を備え、窓は固定式とした。〈六甲車庫〉
インテリアは1000形以来続く白デコラと妻部マホガニーの組み合わせ。旅客からもこの組み合わせについて苦情めいたものはないため、「問題のない機能はいじらない」のはエンジニアリングの基本を貫いている。 座席はバケットタイプのオールロングシート。長大トンネル区間を除くと平均駅間距離が1キロを割ってしまう六甲電車において、乗降性の改善は大きなテーマとなっている。そのため2000形のようなクロスシートを普通・準急用に使う考えはない。座面は高さ400mm、奥行き510mm、幅450mmの六甲電車標準タイプで、袖仕切り花柄のデコラを入れている。隣を走る神戸電鉄や乗り入れ先の阪急電鉄に比べ「けばけばしい」との定評はあるものの、他社に比べ全長の短い六甲電車の車内を少しでも広く見せるための苦肉の策でもある。 2500形は現在6編成が3系統の宝塚〜東公園間準急を中心に2700形とともに活躍。2500形と2700形はあわせて14本。日中の準急は10運行なので、1系統や3系統の普通電車にもときどき顔を出している。 準急の二枚看板。2700形(左)と2500形(右)。〈六甲車庫〉
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