六甲電車

 

通過駅こそ4駅に過ぎないが、特急の露払いとして高性能が求められる準急に使われる2700形。〈紅葉丘〉

2700形〈ドラッグスター〉
 2700形は2500形同様、運転曲線がタイトな日中の準急用に走行特性をチューンした車輌で、2500形が新造車なのに対し、2700形は1500形を改造した点が異なる。
 これは、運転特性の改良は増発を伴わないため、新車の導入は旧型車輌の置き換え分である6編成にして予算を圧縮したかった点と、1500形に使われる初期のVVVFインバータ装置の生産が終了し、部品確保のために一部の車輌部品を交換用アセンブリーパーツとして捻出するため、1500形8編成に白羽の矢が立った。
 足回りはモータに関しては2700形と同様、出力230kwのMB-5098Acモータを装備するが、コントローラは2700形が4台並列接続のMAV-234-15VRHに対して、2700形は6台並列接続のMAV-236-15VRHとなっている。これは後述の軽量化の一端で下された判断で、コントローラ1台分の軽量化は大きいとしている。そのため、2500形と2700形では機器配置も若干異なり、たとえばコントローラは2500形が1・3・5号車に吊ってあるのに対し、2700形は2・4号車に吊ってあるなどの違いがある。なお、ギアリングは7.07で同等。
 1C4M3コントと1C6M2コントでは、総出力は同じでも当然運転性能には差が出てしまう。具体的には1コント不動時に総出力の1/2を喪失するか1/3を喪失するかといった点、また、コント数を減らした分、1コントにかかる電流値が過大になるため、装置の大型化や絶縁強化など、余分な対策が必要となることであろう。
 2700形の場合は最大負荷をかける場面はき電強化を行なった六甲越区間だけであり、それ以外の区間は180kw相当に減格して運用することでき電設備への負担は大きくないとし、また、1コント喪失時1/2の出力となっても、短時間定格(300kw相当)を採用して1コントで船坂なり六甲山なり有馬なりの駅まで非常走行は可能と判断している。加えてギアリングが7.07なので、40‰上り満車状態でも、1コント起動がかろうじて成立するわけだ。
 台車は種車のKD-110Acを流用しているが、MB-5098Ac用にモータ取り付け座を加工しているため、型番的にはKD-110Ac2としている。なお、KD-110Acとの互換性はない。

2700形は正面窓上縁が黒く塗られているので遠目からでも1500形との区別は容易。〈六甲車庫〉

 なお、勾配起動以外の状態では電源供給能力の関係から他の列車と同じ180kw相当で起動させるため、紅葉山〜六甲山口間では勾配起動スイッチを押すことで160A起動とし、そのほかの区間では67A起動として、出力を抑えている。
 鋼体に関しては、シングルスキン構造で軽量化した2500形に対し、アルミボディとはいえ世代的には一世代前の1500形のボディは鋼体重量にして約2トンほど重い。したがってその分の軽量化が2700形には必要となる。
 1500形と比べ外観で異なる点は、強制通風機が撤去されている点。これは、2500形は固定窓なので強制通風機が必要ではあるが、1500形は窓が開くため必ずしも必要ない。そこで撤去して約1トンの軽量化を果たした。また、パンタグラフも軽量化の対象となり、ひし形のパンタグラフが約450kg、シングルアームパンタグラフが約140kgと重量に大きな差があるので換装された。
 このほかでいうと、配管を大幅に見直すことで編成重量で約1tの軽量化をはかり、前述のようにコントローラを3台から2台に減らすなど細部まで見直しが行われた結果、重量を2500形と同等程度までには押さえ込むことに成功した。
 車内も足回りのリプレイスにあわせて更新された。座席は2500形と同じバケットタイプとなり、座面高さ400mm、座面奥行き510mm、座面幅450mmの標準寸法となった。かけ心地にはいささかの自負があるものの、更新前であれば「混んだときは7人がけ、空いているときはゆったり6人がけ」という座り方ができたのに…というボヤキがないわけではない。

2500形と意匠が揃えられた2700形の車内。〈紅葉丘〉

 車内灯もカバー付き蛍光灯からLEDに更新。アクリルカバーは現在の基準規程では取り付けられないため、灯具の配置を変えて間接照明風としている。
 2700形は第3系統の宝塚〜東公園間の準急にほぼ専属で使われるが、休日などは同じく特急列車からの逃げ切りが必要な、六甲球場前行きの行楽通勤準急などにも充当される。
 2500形・2700形は準急用としての必要数は満たしているので残りの1500形が2700形に改造される予定はないが、今後界磁チョッパ装置の部品が払底したときには、何らかの対策が施されると思われる。

1500形(上)と2700形(下)のサイドビュー。冷房装置や床下機器の違いがわかる。〈生田川〜南本
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