六甲電車

 

野球開催日は1000形と連結し、4連で観客輸送に当たる。〈下山口〜六甲球場前〉

1700形〈ヴァンガード〉
 六甲電車の基本編成は5両つなぎだが、このほかラッシュ時用の増結車および金仙寺湖線船坂〜六甲球場前間の小運転用に、2両つなぎの車両が使われる。
 5両つなぎの車両は運用に若干の限定要素はあるものの、いずれの車両も終日各系統で使われるが、2両つなぎはラッシュ時こそ5運用が増結用として使われるものの、平日日中は1運用しかないなど、運用効率が5両つなぎに比べ低い。そのためこれまでは古くなった5両つなぎの車両を2両つなぎに短縮して再利用しており、現在は1000形がその任に当たっている。しかし、1000形は2ドア車でありラッシュ時に使うには2ドアは案内上も問題があることから、3ドアの増結車両を製造することとなった。これが1700形だ。
 1700形は2両つなぎの車両で唯一3ドア車となっているので、ラッシュ時は本線通勤急行の増結用に優先的に使われ、日中も金仙寺湖線の折り返し運用を中心に幅広く活躍する一方、平日に集中的に使われる関係上、休日は車庫で休むケースが多い。
 基本構造は2500形に範をとっているが、ボディはアルミボディよりも安く作れるステンレス製となった。ステンレスボディは塗装工程が省略できるため、イニシャルだけでなくランニングコストの低減も期待できる。重量面ではアルミボディに及ばないのが正直なところだが、1700形は2両つなぎで軸重制限にも余裕があるため採用に踏み切っている。
 なお、構造は同じステンレスボディの9500形とは異なり、レーザー溶接のボディで表面はベルトグラインド仕上げとなり、ステンレス車につき物であったスポット痕や継ぎ目が目立たない構造となっている。

9500形(奥)と1700形(手前)の連結。同じステンレスボディでも溶接方法が異なるため、仕上げも異なる。1700形には水平方向にベルトグラインド仕上げ特有の模様が入る。〈紅葉丘〉

 空調に関しても2500形で採用した強制換気装置を省略し、集中型クーラー+換気装置の組み合わせで対応するなど、低価格を意識したデザインになっている。
 足回りは9500形との併結機会がもっとも多いため、コントこそ9500形のGTOではなくフルSiCのVVVFとなったものの、走行特性は9500形に合わせたセッティングとしている。すなわちMAV-194-15VRHBコントローラと175kwのMB-5061Acの組み合わせ。ギアリングも6.53と9500形と同じだ。ただし、9500形は1C4Mだったのに対し1700形は1C3M相当とし、2両で2コント構成になっている点が異なる。このシステム変更によって1700形は山岳区間を単独での運行が可能となった。
 価格を安く上げるため、SIVこそ新造したもののコンプレッサは2500形のMBUスクロールコンプレッサではなく発生品のHB-2000を流用。フィルタリアクトルなども他車からの発生品でまかなっている。
 台車は2500形同様のKD-330Acシュリーレン台車。このあたりも価格面で相当不利になっている部分ではあるが、足回りに関してはコストよりも安全を重視し、実績のあるシュリーレン台車にこだわりたいようだ。

座席は三菱重工のG-Fitを初採用。かけごこちについて真正面から取り組んだ座席として六甲電車の中では評価が高い。

 座席は三菱重工のG-Fitをはじめて採用。ロングシートでありながらトルソ角105度を実現し、なおかつ低い座面と収容力を両立するため、座面の形状に工夫を凝らした座席として、六甲電車が注目したもの。座面幅は10mm増の460mmだが、奥行きをこれまでの510mmから590mmに増大してランバーの安定を図っている。ベルベット地の耐久性が確認され次第、全面的に採用したいというほどに六甲電車はG-Fitに対して高い評価をしている。
 インテリアは白色デコラに妻面マホガニーの標準的な構成としている。ただし、LED案内装置は千鳥配置になるなど、コストダウンが図られている。
 1700形は2014年に1編成が作られたものの、それ以降は700・800形置き換え用の2500形増備が優先されており、いまだ2両1編成のフリートのままとなっている。しかし、5両つなぎの旧型車両の淘汰が一段落すれば、年間1編成程度のペースで1700形を製造することになっている。
 1700形の導入は、今後厳しくなる鉄道運営において、旅客のサービスレベルを維持した上でどこまでイニシャルコストやランニングコストを削減できるかの試金石でもある。1700形につけられた〈ヴァンガード〉というペットネームも、六甲電車の未来に向けて走る最前線の意味を託している。

伝統にこだわらず、いかに品質を保ったまま輸送コストを下げられるかも、六甲電車が抱えた課題のひとつであり、1700形はその課題に対するひとつの解であるとも言える。〈六甲車庫〉

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サマンサ 2015
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