六甲電車

 

上野通駅を発車して岩屋方面に向かう1200形。ドア配置の関係から神戸市内での運用が多い。〈上野通〜王子公園〉

1200形〈ファウンデーション〉

 1980年から始まった10年計画『プロジェクト80』計画に則り、800形通勤電車の製造が続けられる予定だったが、搭載機器が高価なため年1編成の製造が限度で、資金面で計画の遅延が懸念された。そこで機器を見直し、比較的廉価に量産できる車両に計画が変更されたのが1200形だ。1200形の登場は1983年。登場順としては1985年落成の1000形よりも先になるが、これは切りのよい番号である1000を特急用に割り振るため1000形を飛ばして1200形としたいきさつがある。
 1200形は5連対応工事が先行した区間から順次投入していく方針をとって、当初より5両つなぎで登場。800形のように暫定3両つなぎは行なっておらず、3台車1コントの編成内2コント構成で登場している。
 制御方式は800形で使われた高価なAVFチョッパ制御を見直し、コンパウンドモータを使用した界磁チョッパ制御となる。6モータを直列接続し、FCM-206-15VRDHコントローラで制御する。モータは端子電圧500VのMB-3310Acでギアリングは6.06となっている。

高価なAVFチョッパ制御では旧型車の置き換えペースが進まないため、コンパウンドモータを採用し界磁チョッパとした1200形。全界磁段までの加速に必要な抵抗器が床下に見える。隣は界磁接触器。〈船坂車庫〉

 MB-3310Acの素性は低回転高トルクモータではあるが、ピークはMB-3290Acに比べ少々高回転までまわるように設計。リミットは4,600rpmとしたため平坦線では全界磁終了33km/hまでの加速力3.5km/h/sを確保できた。一方、最高速度は加速よりのギアリングが災いして100km/hにとどまっている(φ820条件で117km/h)。これは800形が起動や勾配運転の際に電流を食いすぎるため、増発が難しくなっていることへの対応で、1200形のギアリングを加速性能に振って起動時の電流をセーブしつつ、六甲電車の線形にふさわしい性能を求めたためだ。もっとも当時の最高認可速度95km/hにおいては高速性能に関しても十分であった。
 ブレーキはMBS-R。六甲電車で初めて電気指令式を採用している。これは800形のHSC-RDが乗務員に不評で、安定した回生ブレーキの搭載が望まれたためだ。界磁チョッパ制御のゼロアンペア制御と45km/h以上での定速度走行を組み合わることで連続下り勾配での安定した走行を可能にした。ギアリングの低速化によって高速域の回生ブレーキ絞込みが懸念されるが、これについてはコンパウンドモータの特性上逆起電力を上げることで高速域の回生失効に対応できること、さらにどうしようもない場合は発電ブレーキに切り替える(ただし、ゼロアンペア制御はこの時点で失効する)ことで保安度を向上している。なお、空気ブレーキに関してはこれまでどおり両抱きの鋳鉄制輪子を採用している。
 台車は800形のKD-36sを改良したKD-38sシュリーレン台車。六甲電車では最後のまくらばねに金属ばねを使用した車両となった。
 車体は正面形状は800形を踏襲したものの、側面は800形が車体強度の関係で1150mm幅の片開き3ドアだったのを、アルミボディで軽量化して戸袋窓を廃止することで強度を確保。開口幅1,300mmの両開き3ドアとなった。ドアの開口幅を広げるのはこれまで車両強度上難しかったが、鋼体重量を軽減した分で車体強度を確保でき、3ドアでも軸重を制限ギリギリの12tとしている。
 車内は800形と同様のロングシート。座面幅440mm、奥行き480mm、高さ420mmとかけ心地を考慮した寸法ではあるが、いかんせんトルソ角が90度では根本的な改善にいたっていないのが残念なところ。このへんの鬱憤は特急用の1000形で晴らしている。

1200形(右)から両開きの扉を採用。なお、山上の街駅のホームゲートは1500形のドア配置にあわせたため、1200形は同駅停車の運用にはつけない。〈船坂車庫〉

 1200形は1983年から1985年までの間に5編成を製造。そのほか800形用の増結用中間車として6両、700形の増結用中間車として5両が同仕様で作られたが、制御方式はそれぞれの形式にあわせている。1985年からは特急用の1000形の製造が始まるためいったん1200形の製造は打ち切られたが、1000形が所要数に達した後は技術の進化を反映すべきという考えからVVVF制御の1500形を新規に起こしたため、1200形は5編成の製造にとどまっている。
 運用は山上の街駅のホームゲートとドア位置が対応していないため、山上の街駅に停車しない列車の運用に充当されるが、走行性能から1系統の上野通〜岩屋〜三宮間および3系統の六甲山口回転列車で使われることが多い。
 なお、現在700・800形を2500形に置き換えるべく2500形が年1〜2本新造されているが、その後1200形も置き換えの対象になるかどうかは現在のところ未定。しかし、製造から40年を迎えるまでには、何らかの手段で置き換えがなされることだろう。

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