六甲電車

 

3号車にダブルデッカー車両2060型を組み込んだ2002編成。〈六甲車庫〉

2000形増結計画

 六甲電車は有馬温泉をはじめ、沿線に数多くの観光施設を擁しており、通勤・通学輸送だけでなく観光輸送の重責も担っている。
 有馬温泉への観光需要の掘り起こし、沿線観光地の魅力向上は六甲電車の課題であったが、有馬温泉組合からの要請もあり2000形特急電車にダブルデッカー車両2060型を増結することが2014年初頭に決定された。
 しかし、通常の運行を妨げることなく14編成の2000形に1両増結するためには綿密な計画が必要となる。駅設備の改良、旅客案内、乗り入れ先との折衝なども含め、2016年1月より組み込みをはじめるべく計画が立案された。
 車両の組み込みと改造工事の概要は以下のとおり。3号車に2060型を挿入。4号車(現3号車)の2160型の機器を吊りかえると同時に座席をロングシートから固定クロスシートに改造することとなる。
 これらを勘案すると、2160型の更新に7日(平行して2000型・2030型にドアカット装置の取り付け)、2060型の組み込みに1日、ソフトウェア書き換え・機能試験に2日、試運転に1日の計11日のタクトとなる。月2.5編成のペースで約6ヶ月の工期となるが、この間にも同時に営業車両の重要部検査なども行なわなければならないため、更新工事には7ヶ月の期間を見ることとなる。2016年1月からはじめて、7月末に全編成の工事を完了させる予定だ。

車両組み込み・改造イメージ


機器の組み込み・転用イメージ

 工事の場所は編成替えが伴うため、ジャッキアップのできる六甲工場(船坂車両検査場は列車検査までの設備しかないため、車両のジャッキアップができない)で行い、かつて列車検査を行なっていたの浮きピット線が1線余ってるためそれを活用することとした。
 ところで、2060型組み込みが行なわれる間は5両つなぎの特急と6両つなぎの特急の2種が生まれる。そして2060型はドアがないため、乗車位置が5両つなぎと6両つなぎでは大きく変わるため、旅客の混乱を最小限に抑える案内が必要となる。
 そこで、暫定的に特急を5両つなぎの「緑特急」と6両つなぎの「赤特急」に分け、駅の案内、列車種別の表示もすべて色分けすることにした。赤特急と緑特急の運用は前日までに決定し、列車運行システム『ユグドラシル』に入力することとした。幸いにも「急行」のトランスポンダが使われていない状態のため、急行のIDを暫定的に赤特急に流用することとなった。つまり、6連赤特急はトランスポンダIDを「急行」として走るわけだ。

1月より特急は緑特急(左・5両つなぎ)と赤特急(右・6両つなぎ)の2種類で案内。赤特急には〈有馬ラウンジ〉の副標も取り付ける。〈六甲車庫〉

 なお、ソフトウェアの切替は2016年1月2日。これは、毎年大晦日〜元旦にかけて1往復だけ急行の運転が行なわれるためだ。
 なお、トランスポンダの変更は乗り入れ先の能勢電鉄にもお願いしなくてはならない。暫定的にアイデントラのIDをひとつ借りることで対応が可能となった。
 車両製造とあわせてインフラ工事も進めなくてはならない。六甲電車内の特急停車駅はすべて7両対応になっているため問題ないが、能勢電鉄の笹部・光風台・ときわ台・妙見口の4駅は5両対応(80m)なので、ホームの延伸が必要となる。特に光風台駅は両側をトンネルに挟まれているため難工事となる。ゆえに立案から実施まで丸1年のスパンが必要となったのである。
 また、6両の停車目標の設置や乗務員訓練なども必要となるなど、1両増結するだけでも手間はかなりのものとなる。
 すべての2000形が6両つなぎになるのは2016年7月の予定だ。

乗車位置や発車案内も緑特急・赤特急で区分し、旅客が混乱しないよう配慮する。〈宝塚〉
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