楽園軌道の車両

■概況
 楽園軌道は別表の通り、36両(連接車は2車体連接で1両とカウント)の電車を運用している。このうち200形・220形7両を除いた29両が冷房車で、冷房化率は80.6%となっている。
 年間平均気温22度の森島においていまだ冷房化率が100%ではないというのは旅客サービス上たいへん問題であるが、運用を工夫して夏季はほぼ冷房車だけで運用できる体制を作っている。もっとも冬季でも日中は20度を超える日もあり、非冷房車の置き換えは喫緊の課題である。
 冷房化が進まなかった理由はナローゲージゆえに重心の問題から屋上に機器を搭載することができず、床置式のコンパクトなインバータクーラーが登場するまで冷房化が困難だったためだ。楽園軌道初の冷房車である370形もその搭載にはやはり軽便鉄道ゆえの苦労があった。
楽園軌道初の冷房車370形、その後370形を元に冷房改造した300形の場合は、床置き冷房としたため客室が狭くなったり、300形にいたってはドアと冷房機が干渉するといった苦労があった。

冷房装置とドアが干渉したため、扉周りの改造が必要となった300形。

 その後の500形・520形では機器室と客室を完全に分ける構造としたものの、客室面積が狭くなるという問題は解決に至ってない。
 屋上を使えないという軽便電車のハンデをもろにかぶってしまっている部分である。

■遅れているバリアフリー
 バリアフリーの面でも楽園軌道は現代の水準にあるとはいいがたい。
 36両中超低床車は13両。全体の1/3といえば聞こえはいいが、その半数以上を占める500形・550形はほぼC号系統専用で、ほかの系統に入る超低床車は520形4両、370形1両の計5両にすぎない。
 森島は平地が狭く、併用軌道区間の道幅も十分ではない。そのため安全島を造ることができず、道路に線を引いただけの「危険極まりない安全地帯」が多数存在する。
 そういった電停での乗降を円滑にするためには超低床車の導入を積極的に進める必要があるが、専用設計の超低床車は高価で導入が進んでいないのが現状だ。
 2016年になったようやく、比較的低価格で製造可能な520形電車の製造に着手したものの、製造ペースは年間2両程度で、全車両が低床車になるにはまだまだ時間がかかりそうだ。

ナローゲージゆえに独立車輪方式の超低床化が不可能。加えて重心の関係から屋上に機器を設置できないため超低床車の導入が遅れてしまった。

■システム
 楽園軌道は電圧600Vの軌道線で、連結運転による総括制御は考慮しなくてよかったので、シンプルなダイレクトコントローラ+SM-3という組み合わせを長年採用してきた。
 ダイレクトコントローラの利点はコントローラをマスコンに内蔵しているため、床下にコントをぶら下げる必要がない。そのため小型車両の楽園軌道においては有利なシステムたり得るのだ。
 最初の超低床車である370形がダイレクトコントローラで投入された理由もまさにそれで、冷房化でSIVを搭載しなくてはならない上に低床化で機器の置き場がなくなるため、すこしでも機器の数を減らすという観点からダイレクトコントローラを採用している。
 しかし将来的にはこれらの機器は製造されなくなることが目に見えているため、間接制御への切り替えは将来的には考える必要があるだろう。500形・550形はSiC-VVVFで登場したが、これは機器が全体的にコンパクトにまとまる利点を買ったものだ。
 500形・550形はくわえてエアレス化によるCP省略も実現した。空気系統がなくなることでコンプレッサ・元空気ダメおよびそれにまつわる配管がすべて省略でき、軽量化と機器配置の簡略化が実現した。
 もっとも、それがゆえにダイレクトコントローラ車との連結の際は電気信号のやり取りが必須となり、路面電車にはに使わない電気連結器を装備している点も、楽園軌道ならではのスタイルといえる。


▲ダイレクトドライブ+SMEという100年前の技術から、一気にSiC-VVVF+全電気ブレーキという現代の技術を投入した500形。スパイラルベベルギアが台車外側に露出しているため台車カバをかけている。
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