520形電車
製造期間:2012年~2015年製造
活躍期間:2012年~現在
製造両数:4両 廃車:なし車両寸法:13,600×2,016×3,650mm 空車質量:17t
モータ:MB-172NR(37.5kW/600V/90A/1,400kg)
ギアリング:14:63=4.5 駆動方式:つりかけ 制御方式:直接制御
最高速度:50㎞/h

 370形電車のデータをもとにまとめた低床電車で2012年に登場。500形よりも先に520形は登場しているが、これは空港線建設計画の際に新造の500形・改造車の520形として計画されており、廉価版の520形が先に登場したため登場順と車号が逆転した経緯がある。
 520形は370形の運用実績をもとにリファインされた超低床車。370形では中央に低床部を設け、台車部分とは段差で結ぶ構造としたがウオークスルーに問題があり、客室はフラットにすべきであるという進言がなされた。
 それができれば苦労はしねぇよ、という話ではあるがアルナ車両殿から「リトルダンサーS」タイプの提案を受け、これをベースに超低床車を製造することになった。
 リトルダンサーSタイプは車体両端に台車を置き、オーバーハングを低床化するデザイン。そのため車体幅は曲線通過の関係で絞らざるを得ず、300形などの2,100㎜に対して2,000㎜となってしまった。加えて車体の一部を機器室として使わざるを得ず、定員は55名と収容力に課題を残した。
2,200㎜幅の500形(中央)と並ぶと車幅の狭さが際立つ520形(右)。

 走行機器は製造価格を抑えるため廃車候補の旧型車から機器を流用している。種車の候補としては220形、250形があったが、220形のコントローラはKR-8、ブレーキはSL-1だった。SL-1はシムの調整次第で操作感が重くなってしまうため、操作感の軽い250形のPV-3を使うことにした。
 コントはダイレクトコントローラのDR1-LBK。基本性能はKR-8と同じだがLBを内蔵している点が異なる。結果的な話になるが、DR1-LBKを採用した結果、のちに登場する500形との連結が可能になったといっても過言ではない。
 せっかくの超低床新型車両なのにダイレクトコントローラという100年前の技術を使うのはいかがなものかという向きもあると思うが、車両価格を抑える以外にも、軽便鉄道ゆえにダイレクトコントローラ以外の選択肢がなかったという理由もある。
 たとえなVVVFインバータ制御にしようと思った場合、コントローラのほかにフィルタリアクトルやインバータ起動装置、SIV、断流器といった機器が必要になる。しかしこれらの機器を載せるスペースを520方は捻出できなかったのだ。
 というのは、ゲージや車体幅が狭い楽園軌道では、重心が高くなると乗り心地の低下や脱線の危険があるため、屋上に機器を搭載できない。そして超低床車なので床下にも機器は搭載できない。そうなると床上にあらゆる機器を搭載しなくてはならないので、可能な限りコンパクトにまとめる必要がある。
 ダイレクトコントローラとSM-3の組み合わせであれば、必要な機器で重量がかさむのは抵抗器とコンプレッサくらいなもの。これだけ少なければ何とか床上に機器を配置したうえで冷房とSIVを搭載できると踏んだわけだ。

外見は近代的なLRVだがシステムは100年前から続くダイレクトコントローラ。計器は双針の圧力計が1個だけ。右端には500形との併結用マスコンが見える。

 つまり、軽便鉄道ゆえにダイレクトコントローラしか選択肢が(当時は)なかったというわけだ。
 駆動方式はつりかけ式。モータは250形のMB-172NRを流用。出力も37.5kw×2で変わらない。ギアリングは63:14=4.5と浅いが、最高速度は50㎞/hも出れば十分なので性能的には問題ない。むしろ低速での加速性能を重視したセッティングといえる。
 この引張力を活かして東線のダイナマイトパイン輸送貨車をけん引する運用にも使われる。東線は最高速度40㎞/hなので性能面でも問題はない。
 電車が貨車をけん引するという、かつてはどこでも見られたが今はどこにも見られない軽便ならではの光景は、森島という最果ての島に鉄道マニアを呼び寄せる程度にはエモーショナルな光景らしい。


ダイナマイトパインを積んだ貨車をけん引し、峠を下る520形。低速トルクの太いMB-172NRとギアリング4.5の組み合わせで抜群の引張力がある。

 製造後の改造としては、500形登場後に500形と併結運転が行えるよう、運転台にマスコンハンドルを増設している。500形とは電気連結器で接続し、最低限の電気信号をやり取りして総括制御を行う。
 電連の1番ピンと56番ピンが短絡すると連結モードとなり、DR1-LBKコントのLBを作動させると500形のTcとしてふるまうようになる。
 ブレーキは500形に依存するのでSM-3は沈黙するが、非常ブレーキに限ってはSM-3側も作動する。
 とはいえ500形には空気ブレーキがないため、BPをつなぐことはできない。そこで520形でEB(またはTE)が指令されると電連の4番と52番を短絡。直ちに520形側に非常ブレーキがかかり、3番ピンに通電すると、520形の元空気ダメのコックを電磁石で「物理的に」開けることで非常ブレーキを成立させている。
 言っていることがよくわからない向きも多いだろうが気にすることはない。要は「野蛮で乱暴な方式で非常ブレーキをかけている」ということを理解すれば上出来だ。なお、非常ブレーキを復帰するにはブレーキをEB以外のB位置にセット(3番ピンを開放)し、運転台後ろの機器室の蓋を開けて元空気ダメのコックを「物理的に」閉じてコンプレッサを再起動させる必要がある。再起動までの手順は厄介だが、だからといって非常ブレーキをためらってはいけない。危険だと思ったらビシバシかけるべきなのである。
 現在520形は521~524の4両が在籍しているが、種車の250形が枯渇してしまったため、この4両で製造が止まっている。今後220形を種車に改造を進めるのか、それとも新形式を起こすのかは決まっていない。

朝のラッシュ時にみられる520形と500形の連結運転。なお、520形同士の連結はダイレクトコントローラゆえに不可能となっている。

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