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●すみさといちご鉄道の車両デザインについて
(2)キハF260のデザイン
 お金のない第3セクター鉄道で新車を購入する……その命題に対し俺が出した回答は『技術屋に体を売る』ということでした。もちろん技術屋に売る体ですから、いちご鉄道側にも相応の技術的見識がなくてはいけません。まあそれは、キハF230を作ったときのちょっと無茶な注文あたりが伏線になっているとでもしてください。
 さて、そんなわけで最新技術の塊みたいな気動車がいちご鉄道に入線したわけです。機構的には成熟している液体式気動車を捨てて、ハイブリッド気動車を導入するメリットってなんだろうというところからまず考えなくてはうそ臭くなってしまいます。
 ハイブリッド気動車を使う最大のメリットは、駆動機構にモータを使うことです。でもわざわざバッテリに電気をためてモータを回す意義ってあるの? エンジンから直接駆動系につないだほうがいいじゃないと思う方もいると思います。実際、プリウスなんかはパラレルハイブリッド方式と称して高速域では直接エンジンから駆動系につないでいますし。
 モータは1枚のギアで、低速から高速までまんべんなくトルクが出せるんです。エンジンですとこうはいきません。エンジンのトルクピークは最高回転数付近にあります。つまり、ギアが1枚の場合は最高速度になって初めてエンジン本来の馬力やトルクが発揮できる。だから自動車はギアレシオをクロスさせて、エンジンのおいしいところを上手に使って走るわけです。気動車も最近は直結3段とかありまして、CCSががちゃこんとギアを変えるのですが、自動車よりもはるかに重たい気動車では、変速ショックはなかなか改善できません。ましてや連結するとなればなおさらです。
 一方、モータのトルクは電圧と電流、回転数で決まりますので、たとえばキハF260であれば、歯数比6.53のギア1枚で、1キロから100キロまでリニアにトルクを発生できる。その間の電圧変化は、インバータが一手に引き受けてくれるので変速ショックとも無縁です。エンジンも回転数を変化させず、こちらは最も効率のよい定格回転数でまわして発電に専念するわけですから、一見面倒に見えるハイブリッドシステムでも、トータルシステムとして見ればかなり効率がよいことになります。
 効率がよいということは、エネルギを無駄なく使うということで、トータルコストを下げることができるというわけです。
 
▲ステップレスを狙って思いっきり床面を下げようとしましたが、考えてみれば軽量化のためにキハF230も床面下げているのを忘れていました。なもんで見た感じはあまり変わらないという寂しい結果に終わったのです。

 とはいえ、いくら効率がよくともシステムとして重量がかさんでしまえば意味がありません。重いものを牽引するということは余計なエネルギを使うということです。より効率的にエネルギを使うには、車両の軽量化は絶対的な条件となります。
 そこで車体はアルミ合金としました。肉厚はほぼ倍になりますが、質量そのものは2/3程度になります。とりあえずこの辺で満足すればいいのですが、これではネタになりません。そこでもう少し軽量化を図ってみようと思いました。
 車体を軽量化した分、台枠の負担が減るわけですから台枠も補強を減らせます。さらにあと500キログラムから1トン軽量化したいってことで、台車のセンターを内側に50センチずつずらしました。ボギーセンターを12.9メートルにしたわけです。こうすることでねじり剛性を弱める、つまり軽くすることが可能となります。もっとも、ボギーセンターを詰めた分、オーバーハングが長くなり、車端部においての乗り心地は低下します。が、この部分は乗務員室に当たる部分なので乗り心地悪化OKと割り切ります。
 車輪も波打ち車輪で車輪径762ミリと小さくし、台車もホイールベース2000ミリとわずかではありますが小型化します。これで台車1台0.5トンの軽量化が可能となります。また、ボルスタレス台車(個人的には嫌いですが)の採用でさらに0.6トンの軽量化も図ってます。
 こうやって涙ぐましい軽量化を図った結果、バッテリや発電機の重量増をなんとか相殺でき、車重27.8トンという設定を可能としました。それでもキハ35より4トン軽いだけなんですけどね……。冷房って重いや。
 せっかく車輪や台車を小さくしたので、床面高さも100ミリ思い切って下げてみました。エンジンがかなりきわどい位置に来ますが、何とかなりそうです。そんなわけでキハF260はステップレスになりました……なんか気動車らしくないんですけど。

 さて、シリースハイブリッドってことは、エンジンをどこに置こうがかまわないわけです。てことは、車体中心(重心)にクソ重たいエンジンや燃タンを集中的に配置して、慣性モーメントを軽減するということもできるじゃないか! なんて天才的な思いつき! と思いましたが、結果として割と平均的に機器を配置しています。考えてみればそこに重さが集中したら、台枠を補強しなくちゃならんではないですか。せっかく軽量化した意味がなくなってしまいます。また、2軸台車ならともかく、ボギー構造ならば慣性モーメントに関してはそれほど気にしなくてよいかなと
いうのもあります。

 ドンガラはJR125系をベースに、適当なアレンジを行いました。アルミ押し出し材使用ですから、形状はトコロテン状にシンプルに。正面の赤い部分はFRPとなっております。事故ったらえらいこっちゃです。
 内装は通勤用ということでロングシート。座席定員は50名です。

 F260のデザインは、こんな感じで行いました。
 果たして弱小3セクのエースとして、どこまで「動いて」くれるでしょうか。

サマンサ 2007/mailto:dan564@gmail.com inserted by FC2 system