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●すみさといちご鉄道の車両デザインについて

(1)キハF230形のデザイン
▲キハF230形。見てくれはきわめて標準的なNDCですが、元ネタは国鉄/JR四国のキハ32です。もっとも後年の改造でキハ32とは似てもにつかぬものになってしまいましたが。
 なんつっても俺の架鉄は車両からです。これまでの架鉄でも車両デザインに関しては一番時間を割いて各種検討していました(おかげでスタイルはどれもこれもぱっとしないものばかりです)。
 キハF230を最初に考えたとき、あんまり新しい技術は入れないようにしようと。なにせ第3セクターのローカル鉄道ですから、メインテナンス設備だってそんなすごいものはないわけで、メンテができない高性能車なんてお呼びじゃない。
 とはいえ、DMH17のようにやたら手間のかかるエンジンだってお呼びじゃないわけで。ローテクで壊れないエンジンといったら何かってことを考えて、DMF14HZとDF115(TC-2)という組み合わせに落ち着きました。この時点ではCCSは未装備で、電磁弁を介して操作するマニュアルトランスミッション。直結1段変速1段のシンプルな機構で設定しました。35キロまで変速で引っ張って、そこから直結でぶん回すというやり方。まあシンプルはシンプルなんですがその後のディーゼルカーの変遷を見ていると、ローカル線でも多段式を割と普通に採用しているんですね。てことは、澄里でも後年多段式に改造したという設定はありかな、ってことで、TACN22に更新したという設定を後付しました。
 これの背景としては、TC-2が平成14年から検査周期を短縮しなくてはならないと国土交通省からお達しが出たという事情を借りています。検査周期を短縮してTC-2を使い続けるよりも、TACN22に取り替えて検査にかかるコストを圧縮したほうが得、ということにしました。
 ただ、TC-2と互換性があり、湿式多板のDF115Aなら検査周期そのままでいいんですけどね。まあ、DF115はファイナルに逆転機を持ってるから、ちょっと構造がややこしかったりするわけで、その辺を一気にシンプルにしてしまおうという意図もあったかもしれません。
 俺の中では「機械は(仕様を満たす中において)シンプルであればあるほどよい機械である」という信念みたいなものがありますので、そういったところがデザインに反映されたのかもしれません。

 エンジンは定格で280馬力。実馬力は230馬力です。昨今のクルマとしてはアンダーパワーかなという気がしないでもありませんが、線形から言ってこのくらいで十分でしょう。仮に330馬力にしたところで、1分くらいしか変わりませんし、5秒10秒に血道をあげるような鉄道じゃないわけですから。
 それに、馬力を上げるということは駆動系も強化しなくちゃいけない。強化するってことは重くなるってことです。重くなるというのはロスです。50馬力の向上は必ずしも50馬力分の利益をもたらしてくれるわけじゃない。それは俺の中で美しくない。デザインとしてありえない。そんな考えから、馬力と仕様をはかりにかけて230馬力という数字を選択したしだいです。
 電車だったら定格低くして加減速時だけ限流値あげるなんて手が使えるんですが、ディーゼルカーは230馬力なら額面どおり230馬力しか使えないですからね。いちご鉄道では「電車脳」からの脱却にちょっと時間のかかった俺でした。

 さてTACN22に載せ替えたということは、CCSがおまけについてくるということです。まさか運転士にマニュアルで3段変速をやらせるわけにも行きませんから。CCSが指令器とエンジンの間に挟まるということは、マスコンはただのスイッチなわけです。ですから運転台もTACN22換装の際に全とっかえしたという設定です。
 ただ、ブレーキはここでECBにするかCLEのまま残すか悩みました。結局CLEのままにしたのですが、それはそれで俺の中で「機械はシンプルなほうがよい」という信念に反している気もしますし、一方命綱であるブレーキをコンピュータにやらせたくない、という気持ちもありました。なんだかんだ言ってCLEの機構そのものはシンプルで優秀です。
 
▲モデリングの際に比較検討の意味で作成した折妻バージョン。これってひしゃげたときの復旧を考えたら不便極まりないよな、ってことでお蔵入り。角度出したりカーブ出したりすると、職人さんの工賃も高くなるしね。
 車体は見てわかるとおり、NDCの標準的なものです。ドンガラに関してはあまり関心がないので、3セクらしくそれっぽいスタイルにしておきました。車体の仕様はキハ32を参考にしています。ただし、車体剛性を確保するため、窓は下段固定上段下降窓、ドアは折り戸を採用。鋼体内部に極力水が入らない設計にしています。究極的には車体裾を丸めて、台枠との接合部を保護したかったのですが、標準設計から外れるとえらくコストがかかるのであきらめました。
 正面は切妻です。理由は工賃が安いからです。実は途中まで丸妻の先頭部も作っていたのですが、これがまたえらい手間がかかりまして。つまり手間がかかるということは業務用品において悪いデザインであるということです。フラッグシップトレインのような車両であれば話は別ですが、いちご鉄道にそれはありません。
 車内はボックス座席が少しありますが、ボックスだろうがロングだろうがそのへんはどうでもいいことですし、俺の興味の範囲外です。

 俺にはスタイリングを語る知識も見識もありませんので、スタイルについては「てきとう」の一言なんですが、とりあえず「赤」という塗料を選択したことに対する落とし前だけは、デザインの範疇としてつけておかなくてはなりません。
 車体に使う赤とスカートの赤は違う色です。有機顔料の赤は粒子が細かい(だから光を通して明るくなるんですが)ので隠蔽力が弱い(模型やってる方ならご理解いただけましょう)ゆえに、下地が重要になってきます。車体の赤は明るい赤ですから粒子が細かい。粒子が細かいってことは光を通してスケスケになる。ということは、見事に鋼体の色が透けてしまうわけです。そこで、グレーの下地を縫った後、コーラルピンクを塗装し、さらにその上に赤を塗るという工程を経ています。つまり車体塗装に3工程かかるわけです。これは業務用として果たして正義かと問われれば「悪」だと思うのですが、車両は鉄道会社の顔だから、という理由で3工程1日のロスタイムを受け入れています。
 ちなみにスカートの赤は、酸化鉄の顔料を使用した安い塗料です。これなら下地がいいかげんでも、隠蔽力が高い(=粒子が粗いので光を通さない。だからスケスケにならないけど暗い)ので問題ないわけ。ただし、合成塗料に比べてくすみますが。
 まあ、安い青なり緑なりをぬったくればいい話ではあります(たまに出てくる姫川交通バスが緑を塗ってるのも、塗料が安く隠蔽力が高いからです)が、俺自身が赤い電車が好きなんでその辺はごめんなさい。

 こんな具合に、キハF230はデザインしました。どこまで「第3セクターらしく」デザインできたかは読者の感想がすべてであり、俺がどうこう言うものではないのはわかっておりますが、まあ作る側からすれば「こんな感じかな」てなもんです。

次回はキハD160形の話でもしましょう。

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