Nゲージ新幹線
  ■501 読み物:玩具と模型の違い

 『鉄道模型が鉄道玩具と違いデリケート』などといいますが、ぶっちゃけ鉄道模型だからと言って何か特別なものがあるというわけではありません。とはいえ鉄道模型は玩具ほどラフに扱えるようにはできていませんし、そのくせ価格は玩具の5〜10倍もします。いったい何が違うというのでしょう。

●スケール準拠
 鉄道模型はスケールが決められています。Nゲージの場合新幹線電車なら1:160、在来線ではおおむね1:150のおおきさで造られ、線路の幅は9mmです。これらはメーカーが異なっても必ず守るべきこととして決められています。
 一方で玩具の場合、パッケージの大きさがスケールに優先します。ガチャマシンの大きさに合わせて造られるカプセルプラレールやお店の什器のサイズに合わせて造られるプラレールなどがその例といえます。
鉄道模型はスケールの優先順位が高くなっています。一方玩具はパッケージのサイズが優先。左の『トレイン』はゲージこそ9mmでNゲージの線路に乗りますが、車体寸法はガチャマシンのパッケージに支配されています。

●パーツの安全性

 鉄道模型は15歳以上の人が遊ぶことを前提にデザインされています。これは、実車にイメージを近づけるために避けられない部分です。たとえばアンテナやパンタグラフといった小さな部品は、玩具では許されません。なぜならとがった部分で子供が怪我をしたり、小さなパーツをうっかり飲み込んでしまう危険を排除しなければならないためです。
 ですから玩具の車輪はちょっとやそっとでは取り外せないようになってますし、パンタグラフやアンテナといったパーツは車体と一体になって取り外せないか、省略されます。
 また、子供向け玩具ではとがった部品はご法度なので全体的に角が取れたデザインになります。『本物そっくり』なことよりも、安全が大事なのが玩具です。一方で鉄道模型は分別が付いて自分の責任で遊べる大人が対象となっているので、細かいパーツやとがった部品の使用が可能となります。

▲パンタグラフはたいへん繊細なパーツです。玩具(左は『トミカトレイン』)ではうっかりこどもが壊して怪我をしたり、誤って飲み込まないよう車体と一体化するか省略するのが通例です。

●金型の精度

 多くの玩具や模型はプラスチックで作られています。プラスチックの模型や玩具の場合、金型(たい焼きを焼く道具みたいなもんです)にプラスチックを流し込んで造るのですが、この金型の精度は細かくなるほど価格が上がります。
 玩具は闇雲に価格を上げるわけには行きませんので、ある程度精度を妥協します。したがってパーツの分割線などに特段の配慮をすることはあまりありません。
 鉄道模型はユーザーの目が無駄に(本当に、無駄に)肥えているので本物に存在しない分割線が出ることを好みません。そこでコストアップを承知の上で金型の精度を高くしています。さらにパーツを細かく分割し、細かいところまで造りこむのでそのぶん価格も当然跳ね上がります。
 プラレールが2,000円で売ってるのに、同じ3両でも鉄道模型が10,000円近くなるのはそういった理由もあります。

▲ノーズに分割線の出ているバンダイ『スタートレイン』。玩具であればそれよりも価格が優先されます。実際この商品は300円+税という低価格で発売されました。

Nゲージカトー0系新幹線の分割線。運転台窓の後ろに継ぎ目が見えます。30年前の製品でもこのくらいまで分割線を目立たなくしていました。現代の製品ではこんな分割線すら許されません。

 このように鉄道模型は、統一されたスケールに準拠し、なおかつ可能な限り本物に似せて造るため価格が高騰し、取り扱いにも注意が必要となります。ちょっとラフにあつかったりメインテナンスを怠ると簡単に壊れてしまいますので、こどもに鉄道模型を買い与えるときは『これまでの玩具は違う』ものであることをしっかりと教えないと、数万円があっという間にゴミと化します。

ブラウザのバックボタンでお戻りください
サマンサ 2017
dan564@gmail.com /サマンサのTumblr
inserted by FC2 system